「日本には太ったプロップ(FW第1列)がいる。彼らは練習で必ず歩いている。大きく強靱で、なおかつ走れるFWをそろえた強豪国を倒すには、スピードと運動量で相手を上回るしかない」

 世界を驚かせるには、代表へのロイヤルティー(帰属意識)を高め、80分間走り続けるフィットネス(体力)を身につける必要があった。ほかの国なら代表合宿で行うのは戦術のすり合わせだが「日本でのヘッドコーチの仕事は、まったく違う仕事」(エディー)。

 チームへの献身と努力し続けるかどうか。ラグビーでは、3年以上住めばその国の代表になれるため、日本代表には外国人も多い。生涯一つの国しか選べない中、自国より日本を選んだ彼らも日本人と同じ選考基準でふるいにかけた。

 年間100~150日、午前5時台から始まり1日3回のハードトレーニング。60分間のうち20分は分速170メートルと、ジョギングの1.4倍の速さでスプリントしなくてはならない内容にした。しかも、選手の首の後ろにはGPSがつけられ、手を抜けば数字に表れる。

「(60分間の)練習のほうがキツい」

 南アと80分間の激闘を終えた選手のコメントから、そのハードさがうかがえる。質、量ともに世界一と自負する練習が、選手の潜在能力を引き出した。

AERA 2015年10月5日号より抜粋