実はこうした行動の背景には、父親の“ある教え”がある。父、宮間文夫。習志野高校サッカー部時代に全国優勝し、読売サッカークラブでもプレーしたことがある元サッカー選手だ。あやの二つ上の姉とその友達のために“フッチボール Surf”というチームをつくった。これがきっかけで、小学校1年生の宮間はサッカーを始める。

 そして小学校6年生、千葉県大会の地区予選決勝。宮間は男子の中で唯一の女子選手として、得意のドリブルを強引に仕掛けていた。だが、なかなか突破できない。前半は相手に押されまくった。ハーフタイム、そんな宮間に監督である父は言った。

「自分以外の仲間のためにプレーしろ」

 宮間は目が覚める思いだった。出場選手だけでなく、ベンチの選手や、怪我などで出場できない選手など一人ひとりの顔が浮かんだ。今までどれだけ自分のためのプレーが多かったことか。何かが宮間の中で変わった。

 この試合は同点で延長戦に入り、宮間が決勝ゴールを決めた。チームメートが体を張ってアシストしてくれた結果だった。

「生まれて初めてチームが一つとなって戦った試合。今も鮮明に覚えている」と、のちに宮間は語った。

 それから15年後、W杯ドイツ大会直前の記者会見。宮間は堂々と答えた。

「どんな時でも、自分以外の仲間のためにプレーしようと思っています」

 こういった精神は対戦相手に対しても同様だ。宮間は言う。

「試合中は確かに『敵』と『味方』に分かれます。でも、試合が終われば大切な『サッカー仲間』なんです。どのチームに対してもライバルと思ったことは一度もありません」

AERA 2015年7月20日号より抜粋