山崎:これは恐らくね、この法案を準備した官僚のやり口だと思うんです。法案を一本一本審議したら大変だから、この際、長年抱えてきた課題を一気に片づけようとしている。あれもこれも入れた、ごった煮のメニューを作って「こんなおいしい料理ができましたよ」と言ってポンと出してきた。で、国会議員は一つひとつの素材を吟味せずにまとめて食べちゃう。この素材に毒が入っているかもしれない、なんてことは考えない。

 官僚たちも国会運営に精通していますから、自民一強の今やっちゃおうと。法案の事実上の提出者は、外務、防衛官僚でしょう。なかでも外務官僚は、外交のツールとして自衛隊を使いたがっている。そして対米追随外交が染みついている。外務大臣もおやりになったんですよね。

岡田:はい(笑)。

●国民投票に問うほどの大転換

山崎:私の経験からすると、アフガニスタン戦争のときも、イラク戦争のときも、アメリカの要請は、なんでもいいから自衛隊を出してくれと、日の丸が欲しいと。そういう言い方をしてきました。アメリカの期待がどこにあるかというのを、外務官僚が一番よく知っているんですね。それと、自衛隊は日米共同訓練をやっているんで、米軍と一体になって行動することに抵抗がない。防衛官僚にもそれは言えると思います。

岡田:今回、議論していて思うのは、集団的自衛権の行使を認めたことで、憲法の平和主義の根幹をなす考え方と辻褄
(つじつま)が合わなくなってきているということです。たとえば専守防衛。日本が攻撃を受けてはじめて反撃できるのが専守防衛なのに、いつの間にか、第三国が攻撃を受けたときも反撃できることになっている。しかし、安倍首相は「専守防衛は変わりません」と答弁する。海外派兵についても同様です。他国の領土などでも武力行使するにもかかわらず、「海外派兵はしない」と言っている。

山崎:安倍首相は、俺が言っているんだから正しいんだと、そういう傲慢(ごうまん)な国会答弁をやっているわけです。

岡田:論理がまったく整っていない議論が平気でまかり通っている。戦後、ずっと積み上げてきた平和憲法とその憲法解釈の一つの体系というものが、今、根底から覆されようとしている。

山崎:いや本当にね、安全保障の議論というのは、匍匐(ほふく)前進のように一歩一歩進めてきたんです。それが一気に、自衛隊が地球の裏側まで行くことになった。本来ならば、国民の皆さんに、国民投票によって賛否を問うくらいの大転換なんです。

岡田:国会ではしっかりとした議論ができるように頑張ります。国民の皆さんにも、もっと声を上げてもらいたいですね。

AERA 2015年6月15日号