では、その戦争が、我が国の国民生活に壊滅的な打撃を与えるほど長く続くかというと、これまでそんな例はない。中東での紛争も、比較的早く終結している。したがって、我が国の石油備蓄量から考えて、機雷がまかれることで壊滅的な打撃を受けることはあり得ません。非常に滑稽な議論をまことしやかにやっている感じがします。

岡田:安倍さんは、ホルムズ海峡が機雷で封鎖されると、日本で「経済的なパニックが起こる」と言った。それを聞いて私は、日本国の首相が言う言葉なのかと、我が耳を疑いました。石油の供給体制に関しては、いろいろな法制度も整備されていますし、必要があれば配給制を敷く準備も政府にはあります。ですから簡単に凍死者、餓死者が出ることもない。首相が言うべきは「絶対にパニックにさせない」という決意のはずです。

●抜け道だらけ 重要影響事態法

山崎:ところで私は、アメリカが日本に集団的自衛権の行使を強く要望していたとは考えていないんです。本当に求めているのは、米軍が有志連合の先頭に立って世界の警察官的役割を果たしているときに、日本もそれに加わることだと思う。イラク戦争(2003年)のときは、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」という表現で伝えられました。その意味で、今回の安全保障法制のなかで、海外で他国軍を後方支援できるようになる国際平和支援法案が恒久法で出てきたことを、アメリカは一番喜んでいると思います。

岡田:国際平和支援法案は、自衛隊を派遣する前に、国会の事前承認を求めたり国連の決議が必要だったりして、かなり“使いにくい”法律です。だから私はむしろ、周辺事態法を改正する重要影響事態法案に注目しています。これは、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」というあいまいな基準で自衛隊を派遣でき、国会の承認は事後でもよく、国連決議も要らないことになっている。集団的自衛権の行使も問題だけれども、それ以上に問題がある法案だと考えています。

山崎:それは非常に的確な指摘だと思います。二つの法案とも、自衛隊の活動内容はほぼ重なっていますしね。

岡田:国際平和支援法案に基づく自衛隊派遣の“入り口”が公明党との協議で狭くなったので、重要影響事態法案を使い勝手のいい法律として準備したということだと思うんですね。「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」というのは、改正前の周辺事態法とほぼ同じ定義ですが、地理的な縛りがなくなりましたし、日米安保条約との関係も希薄になったので、私はどんな場合でも自衛隊を派遣できる法律になりかねないと思っています。

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