●自衛隊は外交のツールになる

――安全保障をめぐる国会審議の舞台で、2人は常にキーパーソンでした。01年のテロ対策特措法のときは山崎さんが自民党の幹事長で、岡田さんが民主党の政調会長。03年のイラク特措法のときは2人とも両党の幹事長でした。その頃と比べて、今回の国会審議をどのようにご覧になっていますか。

岡田:一つは急ぎ過ぎ、詰め込み過ぎなんですね。テロ特措法にしたって、土曜日も使って丁寧に議論をしました。それを今回は、テロ特措法の10倍くらいボリュームがある法案を一つに束ねてボーンと出してきて、それを夏までに成立させると言っている。国会審議としては粗くならざるを得ない。

 そして、議論不十分のままに自衛隊が海外に出て行くことになる。そこで場合によっては自衛隊員が亡くなったり、相手を殺傷したりする可能性がある。その結果、どういう国民感情が生まれるのか、非常に心配しています。

山崎:今回、十把一絡げに提出された法案のなかには、PKO法の改正案も含まれています。この法案だけでも大きな改正ですから、これだけで一国会を費やすべき筋の話なんです。

 これまで自衛隊は、自分や周囲の仲間が危険な場面で身を守る「自己保存」のための最小限の装備で平和維持活動に参加してきた。そのなかで死者は出していないんです。でも今回の改正案では、「任務遂行」時や「駆けつけ警護」でも武器が使えるようになる。かつては、自衛官に機関銃を1丁持たせるか、2丁かといった細かな議論を延々とやりました。それが今回は、任務遂行のためなら、一気にどんな武器でも持って行けるという話になりかねない。

岡田:まったく同感です。今までPKOの武器使用については、苦労して論理を積み重ねながら、その範囲を広げてきた。それがいきなり、次元の違う話になっているんですね。夏までに成立させるとしたら、国会で議論する機会はほとんどない。ただでさえ難解な安全保障の議論なのに、政府は法案を一気に11も出してきて、押し通そうとしている。非常に乱暴な話なんです。

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