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健常者もはまる激しさ 車いすバスケの奥深い魅力

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中学校で講演をする車いすバスケットボール選手の根木慎志さん/10月21日、奈良県橿原市(撮影/編集部・尾上達也)

中学校で講演をする車いすバスケットボール選手の根木慎志さん/10月21日、奈良県橿原市(撮影/編集部・尾上達也)

そのスピード感と激しさには、健常者もはまること間違いなし。車いすバスケットボールのことだ。欧州にはプロリーグもある。2020年の東京パラリンピックが待ち遠しい(編集部・塩月由香)

 ひと昔前は、車いすバスケットボールの体験会をやっても遠巻きに見る人が多かった。最近は健常者にも 「やってみたい」という人が増えた。25年来、車いすバスケの魅力を伝えて全国を飛び回る根木慎志さん(50)は、そう感じている。

 日本車椅子バスケットボール連盟には昨秋以降、講師派遣の依頼が以前の3倍に増えた。もちろん2020年五輪・パラリンピックの東京開催が決まったからだが、連盟の野口美一会長は誇らしげに言う。

「長年、障がい者スポーツをリードしてきた歴史があるからだと自負しています」

●人間の可能性伝える

 パラリンピックが始まった1960年ローマ大会以来の競技種目。その人気は障がい者スポーツの中でも群を抜く。欧州にはプロリーグがあり、日本人選手も活躍している。安(やす)直樹さん(37)は3年間、イタリアのプロチームでプレーした。日本の競技人口は約800人。10年ほど前からは、主に健常者が出場する大会も開催されている。車いすバスケを題材にした井上雄彦の連載漫画「リアル」は、人気を後押しする。

 根木さんは00年シドニー・パラリンピックの車いすバスケ男子日本代表だ。車いすに乗るようになったのは、高校卒業を目前に起こした自動車の自損事故。脊髄を損傷し、下半身が動かなくなった。入院中に車いすバスケの選手に誘われ、初めてプレーを見て衝撃を受けた。退院後、社会人チームに入り、練習を重ねた。

 パラリンピックはバルセロナ、アトランタと最終選考で日本代表から漏れたが、シドニーで代表入り。当時は36歳で、キャプテンを任された。

 いまは年間100校を超える小中学校を回り、車いすバスケの楽しさを伝えている。

「一緒に車いすでバスケやドッジボールをするなかで、人間の可能性や、障がいって何かを伝えたいんです」(根木さん)

 順天堂大学の大学院生、渡邉夏美さん(24)は10月中旬、東京都内で開かれたスポーツイベントを訪れ、車いすバスケを体験。ほかの健常者らと一緒に、ミニゲームで根木さんに挑んだ。バスケ部に所属した経験もある渡邉さんだったが、歯が立たなかった。

「とにかく動きが速くて何度もディフェンスを抜かれました。必死に追いかけても追いつけない。遠くからシュートもどんどん決まるし……」(渡邉さん)

●障がい者も健常者も

 車いすバスケは、健常者と障がい者が同じ土俵でたたかうことのできる数少ないスポーツ。選手の障がいに応じて持ち点を定める独特のルールはあるが、コートやボールはふつうのバスケと同じ。ひとたび車いすに乗り、コートに立てば、障がいの有無に関係なく相手の身体能力の高さや人間力を実感できる。

 欧州のプロリーグになると、さらに華やかだ。観客は1試合で千人規模。選手は鍛え抜かれた上半身と、細かくオーダーされた「ハ」の字形の競技用車いすを武器に、縦横無尽にコート上を駆けまわり、激しくぶつかり合う。そんな世界のプレーを20年東京パラリンピックでは見ることができるのだ。

 根木さんは、三菱商事の障がい者スポーツ応援プロジェクトで、サポーター役の一人に選ばれた。10月16日に記者発表会があり、こう呼びかけた。

「スポーツで障がい者も健常者もひとつになりましょう」

AERA 2014年11月10日号


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