●認知症進むと増す負担

 冒頭の「父親」が要介護2と認定され、退院後、自宅に戻って一人暮らしを続けると仮定しよう(下記ケース1)。<食事や排泄に何らかの介助を必要としたり、立ち上がりや歩行などに何らかの支えが必要。もの忘れや直前の行動の理解の一部に低下が見られる>というレベルだ。

 まず、車椅子と介護用ベッドをレンタル。月曜から土曜までは朝30分程度、ヘルパーに来てもらい、着替えや朝食の介助を受ける。週に3回、デイケアに通ってリハビリ。介助を受けながら入浴まで済ませる。ここまでで費用は19万3千円。要介護2の支給限度額は標準的な地域で19万6160円(地域の人件費や物価によって加算あり)だから、限度額いっぱいだ。自己負担は1割の1万9300円。

 しかし、一人暮らしだと食事が心配だ。毎食自炊は無理だし、好きな総菜ばかり買っていたのでは栄養も偏る。平日はバランスの取れた夕食の宅配を使えば月1万800円。ここまでは、同居の場合もあまり変わらない。仕事をしていれば日中、親は一人になるし、食事の時間やメニューも家族と合わないこともあるからだ。掃除・洗濯は2時間6300円の代行サービスを月4回頼むことにしよう。

 遠距離介護で心配なのは、緊急時。家の中でまた転んで動けなくなったら──。一定時間トイレのドアの開閉がないとセンサーで察知し、駆けつけてくれる民間の見守りサービスを利用すると、月額約4千円。ここまで総額5万9300円だ。

 月に一度、様子を見に行くとすれば往復の交通費もかかる。東京・福岡間だと航空会社の介護割引を使って4万2千円。しめて10万1300円となった。

 身体的な衰えと同時に気になるのは、認知症だ。家計経済研究所のデータによれば、認知症の程度が重くなると介護費用も増える。要介護度が1以下でも、認知症が重度だと介護費用は月5万7千円。要介護度が4~5で認知症が重度であれば12万6千円に跳ね上がる。

ケース1 福岡の父(要介護2)を遠距離介護
<介護保険の支給限度内(1割自己負担)1万9300円>
月~土 身体介護30分(着替えや食事の介助、デイケアに出かける準備など)
月・水・金 デイケア(機能訓練や介助付きでの入浴)
福祉器具貸与(車椅子など)

<その他のサービス(全額自己負担)4万円>
配食サービス(平日) 2700円/週×4
家事代行(掃除・洗濯など)6300円/2時間×4
見守りサービス(緊急時駆けつけ、ドアの開閉検知など)4千円/月

<月に一度、帰省 4万2千円>
東京―福岡往復 介護帰省割引を利用

【合計】10万1300円
※いずれのケースも介護者は東京在住を想定。

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