在宅、遠距離、施設入所と、ケースによってさまざまな介護費用。
いざというときに慌てないために、親が元気なうちから話し合っておこう。
(編集部・石臥薫子)

 明日早朝からの出張に備えて早めに帰宅し、家族で夕食を囲んでいたときのこと。電話を取った妻の顔色が変わった。

「お父さんから」

 遠方で一人暮らしの父親が転倒して骨折。明日が手術だという。出張はキャンセルだ。考えないようにしてきた「介護」がついに現実になってしまった。

●在宅の平均は月7万円

 これは明日のあなたかもしれない。日本法規情報が7月、30~50代の男女1263人に聞いたアンケートでは、親の介護について「親子で話し合ったことがない」人は58%。「話し合ったことがある」はわずか12%で、5%は「考えたくない」という思考停止状態だった。怖いから考えない。考えないから怖い、という悪循環だ。

「介護の情報は、必要になってからでも集められますが、お金は急に降ってきてくれません。だからこそ、事前にしっかり考えておくと安心です」

 そう語るのは介護のポータルサイト「MY介護の広場」を運営する明治安田システム・テクノロジーの村松円さんだ。

 在宅介護にかかるお金は大きく分けて二つ。(1)公的介護保険の介護サービスの利用費(訪問ヘルパーやデイサービスなど)と、(2)介護サービス以外の費用(医療費やオムツ代など)だ(下記「介護費の負担を減らすための、介護保険の仕組み」参照)。家計経済研究所が在宅で親を介護している人を対象に行った調査(2011年)では、(1)は月平均3万7千円。(2)は3万2千円。合計で6万9千円かかる計算だ。(1)については介護保険の支給限度額内(自己負担1割)でカバーできたのは1万3千円で、残り2万4千円は全額自己負担分だ。

 いざ、介護が必要になったら、地元の介護相談窓口である地域包括支援センターへ行こう。そこでケアマネジャーを紹介してもらい、サービスの内容を相談して決める。

介護費の負担を減らすための、介護保険の仕組み
介護保険の支給限度額までは【1割自己負担】 ※注1
2015年8月から一定の所得(年金年収なら年280万円以上)がある人は自己負担が1割から2割にアップ

(1)公的介護保険の介護サービスの利用費
要支援1 5003円/サービスの目安:週2~3回
要支援2 1万473円/サービスの目安:週3~4回
要介護1 1万6692円/サービスの目安:1日1回程度
要介護2 1万9616円/サービスの目安:1日1~2回程度
要介護3 2万6931円/サービスの目安:1日2回程度
要介護4 3万806円/サービスの目安:1日2~3回程度
要介護5 3万6065円/サービスの目安:1日3~4回程度

→それを超えたら【全額自己負担】
※注1:金額は公的介護保険による在宅サービスの月額自己負担限度額。標準的な地域の例

(2)介護サービス以外の費用 【全額自己負担】※注2
配食・家事代行・紙おむつ支給など
+医療費
※注2:補助が出る自治体もある

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