「ミスはすぐ直さないと後で大変なことになるから」

 娘のお迎えを最大延長の午後10時まで延ばし、ぎりぎりに滑り込んだ。

 この意識格差は、サポート体制の差だけではない。子どもの年齢差も影響していると感じる。ユウコさんも子どもが保育園の時は、預け先さえあれば残業も厭わなかったが、娘が小学生になった頃から繊細なメンタルケアが必要だと痛感した。残業が続くと、娘は途端に口をきいてくれなくなる。

 ただ、この会社でマネジャーとして働くのであれば、子育てを理由に“ユルく”働くことなどできるはずもないことは、ユウコさんだってよくわかる。膨大な仕事量、シビアな成果、過酷な締め切り、正確性を求められる書類…深夜まで残業しなめる男性たちは、当然それをこなしている。

「彼女だけ、子どもがいる女性管理職だからといって、例外ではいられない。会社の常識に染まらないならポストもないのが現実。私はそこまでできない」

 ユウコさんはいま、転職先を探している。(文中カタカナ名は仮名)

AERA  2013年12月16日号より抜粋