近年定着してきたワーキングマザーという言葉。その働き方や意識は様々だが、背景には、サポート態勢の違いがあるようだ。

 淡い期待は、歓迎会の日に脆くも崩れた。大手金融機関で働くユウコさん(44)の部署に今年4月、新しいマネジャーとして着任したのは、30代後半で2歳の子どもを持つ女性。社内でも「できる人」と噂が立つ逸材で、スピード出世を果たした年下上司だ。小学生の娘がいるユウコさんは、同じ子育てしながら働く女性として、大変さを理解し合い、働き方にも融通を利かせてもらえるのではないか、とひそかに期待した。歓迎会のその日。彼女は部下たちの中心に座り、仕事への姿勢をとうとうと語った。

「男も女も関係ない。私はポジションを上げていきたいと思っているから、協力してね」

 娘のお迎え時間を気にしながら、そそくさと帰らなければならない自分と、遅くまで語り続ける彼女はあまりにも対照的だった。その違いは育児サポート体制の差のせいだ。ユウコさんの夫は単身赴任中で、夫婦両方とも実家は遠方。子育ては一人でやるしかなく、放課後は娘を子育て支援NPOに預ける。一方マネジャーは近くに実家があり、保育園のお迎えは毎日、実母が担当する。

 ある日の午後8時、ユウコさんが仕事を片付けてダッシュでお迎えに行こうとしていると、小さなミスが見つかった。修正は翌朝で大丈夫だと思ったが、彼女は譲らない。

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