サーバー管理会社を名乗り、「流出した情報をウェブ上から削除する」として高額な料金を請求する業者も出てきているという(撮影/写真部・山本正樹)
サーバー管理会社を名乗り、「流出した情報をウェブ上から削除する」として高額な料金を請求する業者も出てきているという(撮影/写真部・山本正樹)

 8月26日未明、インターネット掲示板「2ちゃんねる」内の書き込みをチェックしていた唐澤貴洋弁護士(35)は衝撃を受けた。過去の書き込みなどが検索できる有料サービス「2ちゃんねるビューア」に登録していた会員の個人情報が流出しているらしい、という書き込みを見つけたのだ。ネットに書き込まれた誹謗中傷の削除や名誉毀損、侮辱罪での刑事告発などを行ってきた唐澤弁護士は、ネットの世界では有名人。殺害予告をされたこともある。仕事上ビューアを利用していた自分も、もしかして…。不安に思い、検索すると、唐澤弁護士の名前や住所、クレジットカード番号なども流出していることがわかった。すぐにクレジットカード会社に電話したがつながらない。約1時間後、やっと使用停止の手続きができたが、すでに、2ちゃんねるには〈唐澤のカードを使ってやったw〉など悪質な書き込みが見つかった──。

 今回、会員情報流出の被害にあったのは3万人以上。データをアップロードしたのはハンドルネーム「さっしーえっち」なる人物だ。PC遠隔操作事件でも使用された、接続経路を匿名化するソフトウエア「Tor(トーア)」を使用していたため、誰が何の目的で行ったのかは今のところ、わかっていない。

 不正アクセスなどによる個人情報流出は珍しいことではなくなってきている。今回、利用者の多くが戦慄したのは、漏洩データから、匿名のつもりで行っていた書き込みの履歴や発言者が特定される事態になっているからだ。

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