『ビッグダディの流儀』(右)には、〈避妊はしない。計画的に家族をつくるという発想に違和感しきり〉など、独自の哲学が綴られている。左は『ハダカの美奈子 ビッグダディとの2年間、あたしの30年』(撮影/写真部・工藤隆太郎)
ビッグダディの流儀』(右)には、〈避妊はしない。計画的に家族をつくるという発想に違和感しきり〉など、独自の哲学が綴られている。左は『ハダカの美奈子 ビッグダディとの2年間、あたしの30年』(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 日本で今、もっともアツい「会いに行けるアイドル」はこの人かもしれない。大家族密着ドキュメンタリー「痛快!ビッグダディ」(テレビ朝日系)で一躍有名になった「ビッグダディ」こと林下清志さん(48)だ。

 2006年9月に放送が始まった「痛快!ビッグダディ」は、多い時で5男9女を抱えながら奮闘するダディ一家に密着したドキュメンタリーだ。離婚した元妻が別の男性との間にできた子どもを連れて戻ってきたり、また子どもをつくって出て行ったり。まさに波瀾(はらん)万丈の生活がほぼリアルタイムに放送されてきた。4月21日放送の最終回はシリーズ最高の視聴率19.3%(関東地区)を獲得。

 これほどダディ一家に注目が集まる理由は何なのだろうか。

 コラムニストの辛酸なめ子さんもここ2、3年は欠かさずチェックしているという。

「やはり見どころは夫婦ゲンカのシーンでしょうか。ダディが『俺はこういう人間だ!』とタンカを切った次の瞬間、クイック土下座を決めたりする。その刹那的な生き方に励まされます」

 精神科医の斎藤環さんは、多くの人は、ダディ一家の生活に漂う「DQN(ドキュン)」性に惹かれるのでは、と指摘する。

「DQNとはインターネットスラングでヤンキーのこと。ダディの根拠のない自己肯定や家族を大切にする血脈へのこだわりは、ヤンキーカルチャーそのもの。日本人が持つヤンキーへの小さな憧憬が刺激されるのでは」

 実際のダディも番組で見るままの人らしい。プロインタビュアーの吉田豪さんは、先月、ダディが住む岩手県内の整骨院を訪れ対談している。吉田さんによれば、ダディは「テレビ以上にビッグな人」だという。

 一部週刊誌に、3月にダディの預金が税金未納で差し押さえられたことが報じられた。吉田さんが「誰がリークしたんですかね?」と尋ねると、ダディはあっけらかんと「オレだよ」と認めたという。

「『いやー、めったにないことだし、遠くまで取材に来てくれた記者さんを手ぶらで帰したら申し訳ないじゃない』って。本人も言うように、おもしろいかどうかが判断基準なのでしょう」

AERA 2013年7月1日号