体力がある世代のはずの子育て中の働く親たちが、ズルズルと不調な様子。仕事と育児の両立に疲れ果てた身体は、病気に狙われやすいのだ。

 35歳で出産した女性は、産後2カ月でマイコプラズマ肺炎にかかった。薬で咳を抑えていたが、長女が1歳になって保育園の入園を控えた3月のある深夜、ついに呼吸困難に陥った。近くに住む両親を起こすのもはばかられ、長女を夫に託して1人で病院に向かった。

 普段なら徒歩5分の救急外来まで数十分かけてたどり着くと、「もう少し遅いと死んでいたよ」と医師。気管支喘息と診断された。翌朝、出勤するために点滴をつけたまま起きようとして、看護師にベッドに押し戻された。当時は契約社員として働き始めたばかり。

「子どもがいつ発熱するかわからないから、貴重な休みを自分なんかに使っていられなくて」

 病院で点滴を打ってから出社する生活を続け、疲労がピークに達したのか、その1年後には突発性難聴にもなった。

「何でこんなに弱くなっちゃったんだろうね」と母。小中学校は皆勤賞で通した健康優良児だったのに、親になってからは弱る一方だ。

 病児保育のNPO法人「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さんは、こう話す。

「病気になった親は、子どもの世話ができないことや仕事を休むことを後ろめたく感じ、心身ともに参ってしまう。病気の時こそ1人で抱え込まず、人に頼るべきです。普段から周りを巻き込んで備えておき、子どもの病気は成長のプロセスだという前向きな発想も持っていてほしい」

 病児保育室を併設する東京都目黒区のあおば医院の千木良真保院長も言う。

「病気の子どもが母親と一緒にいたがると、まず母親に過度に負担がくる。母親が倒れると、次は父親が倒れるという悪循環になる恐れがある。母親が休めるように父親が家事を引き受けたり、祖父母に頼ったりして、家族みんなで病気を乗り切っていこうという姿勢が大切です」

AERA 2013年6月10日号