
日経平均株価の終値が5月7日、2008年6月以来約5年ぶりに1万4千円台を回復した。昨年11月半ばには9千円台を割り込んでいたところから上昇に転じ、わずか半年で5千円以上も上げ、一気にリーマン・ショック前の水準に戻ったのだ。
もともと、5月第2週ごろには株価は調整局面に入るという観測が有力だった…それなのに、ここにきて日米ともに株価の上昇が止まらないという、いわば「異常事態」。いったい何が起きているのか。第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣氏はこう指摘する。
「米国についてはシェール革命や効果的な通商政策のおかげで実体経済が堅調なのと、4月の雇用統計が市場予測を上回ったことが大きい。日本はそうした米国景気の影響を強く受けているのに加え、アベノミクスが功を奏しています」
日米の国内事情に加えて、JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは、株価上昇のそもそものきっかけとして、欧州情勢の変化が大きかったと見ている。
「ECB(欧州中央銀行)がOMT(新たな国債買い入れプログラム)を発表したことにより、欧州危機に歯止めがかかった。そのため、世界の投資家が株式などリスク資産に積極的に投資する『リスクオン』の状態になっている」
世界的な投資家心理の改善が、日本の株価にも好影響を与えているというわけだ。
気になるのは、今後どうなっていくのか、ということだろう。クレディ・スイス証券の市川眞一チーフ・マーケット・ストラテジストはこう分析する。
「東京市場の割高感を指摘する声もあるが、米国の主要な経済指標を見ても、日本企業の業績を見ても、1万4千円台という水準は十分に説明がつきます」
一方で、本誌でコラムを連載中の金融評論家、ぐっちーさんこと山口正洋氏は、「かなりいいところまで来ちゃっている」と表現する。山口氏は名目GDPと株式時価総額の関係に着目している。12年の日本の名目GDPが約475兆円だったのに対し、今年4月末時点での東証1部、2部、マザーズに上場されている全企業の時価総額は計約411兆円。この状況について、山口氏はこう見る。
「株式時価総額の合計が名目GDPを超えるのは難しい。その意味で、もうぎりぎりのところまで株価の水準は上がっていると言えます。もちろん、米国経済の好調さを考えれば、東証1部上場企業の時価総額がここまで増えることに違和感はありません。しかし、2部やマザーズまで妙に上がってきているのはちょっとおかしい。ここについては、バブルと言っていいのではないか」
※AERA 2013年5月20日号