有休制度はありえない制度、そう書いた経営者のコラムが炎上した。今もはびこる「休ませない論理」に立ち向かう方法はあるのか。

「有給休暇ほど不思議な制度はありません。働かないのに給料がもらえることに、率直に『ありえない』と思う」

 東日本に展開する洋服修繕チェーン店「ビック・ママ」の守井嘉朗社長(43)は今年3月、ウェブのコラムでこう主張した。

「あなたのようなブラック野郎が変わらなければ日本に未来はない」などの批判が渦巻いた。

 ビック・ママは創業20年目。年々拡大し、正社員150人、年商10億円近くにまで成長した。その間は慢性的な人手不足。スタッフ2人のみという小規模店舗が多く、1人休めば店はまわらない。コラム執筆でたたかれるまでは、わざと有休を取りにくくする環境作りをしていたと守井氏は明かす。

「有休を最終的に決裁するのは自分でしたから、病気などの理由がない申請には『え、なんで取るの』とにらみをきかせた」

 仕事が趣味という守井氏は2~3カ月休まないこともざら。下も休めず、これまで有休取得率はひとケタ台だった。

 コラム炎上後、環境の改善を始めた。社長決裁が必要だった有休取得をエリアマネジャーの許可だけでできるようにした。エリアマネジャーは原則として店に入らず、バックアップに回る。いずれは何年かに一度、長期休暇を付与するような仕組みも考えていきたいと言う。

AERA 2012年10月1日号