「Yahoo! JAPAN」生みの親は孫正義にあらず!? 日本一成功したサラリーマン・井上雅博って何者? 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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「Yahoo! JAPAN」生みの親は孫正義にあらず!? 日本一成功したサラリーマン・井上雅博って何者?

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 日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」。おそらくほとんどの人がその名を知っていると思う。では「Yahoo! JAPAN」の生みの親をご存知だろうか。答えは、井上雅博。だが、はにかみ屋でマスコミ嫌いだったせいか、井上の存在自体はあまり知られていない。
 いったい、井上雅博とは何者で、どのような人物なのか。全ての答えは、『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』(講談社)の中で綴られている。

 1996年1月、ソフトバンク社長室で産声を上げた「Yahoo! JAPAN」。同社といえばソフトバンク創業者・孫正義が、米国の「Yahoo!」と事業提携を結んで立ち上げた日本法人である。一見、孫こそ「Yahoo! JAPAN」の生みの親のようにも感じるが、実は事業そのものにはほとんどタッチしていない。孫が初代社長に就いたその半年後、社長の座に就いた井上が日本のサイトシステムを一から作り上げたそうだ。

「井上は事実上のヤフー創業者であり、現在のヤフーがあるのは井上の功績だ、と孫を含め、関係者の誰もが口をそろえる。のちに米国にあった本家のヤフーは同業のGAFAに押されて廃業し、いまやヤフーと名のつくサイトの運営会社は日本にしか存在しない。それも井上の経営判断がもたらした結果といえる」(本書より)

 一説によれば、彼の総資産は1000億円。あるいはそれ以上を上回り、ロマネコンティを国内で一番多く所有した日本人とも言われている。さらに彼は総工費30億円の洋館を建設。その隠れ家に住み込みのシェフを雇い、週末になるとゲストを招待していた。

「母屋のメインルームとなるおよそ50坪のリビングの真ん中には、米スタインウェイ・アンド・サンズ製のヴィンテージピアノが置かれ、ゲストたちは自動演奏されるジャズやクラシックの音色に酔いしれた。家具はほとんどがイタリア・カッシーナ製だ。リビングの大きなガラス扉を開くと、真っ青なプールの水面に富士山が映し出される」(本書より)

 庶民からすればまるで夢のような生活だが、彼もはなから金持ちだったわけではない。むしろ都営団地生まれの庶民育ちで、井上自身も都営団地で新婚生活をスタートさせたという。
 一介のサラリーマンが事業を成功させ、1000億円という莫大な富を築き上げる。なんと夢のある話だろう。もちろん簡単なことではないが、誰にでも可能性があると夢を描かずにはいられない。

 では彼はどうやってここまで成り上がってきたのか。鍵となるのは「ならずもの」。試しにネットで検索してみると、「ならずもの」=「ごろつき」「わるもの」「無頼漢」と、ヒットするのはマイナスな言葉ばかり。決していい意味でないことがわかる。だが本書によれば「Yahoo! JAPAN」の「Yahoo!」には、粗野で型破りな「ならずもの」という意味が込められているらしい。

 事実上の「Yahoo! JAPAN」創始者である井上は、言わば「ならずもの集団」の日本代表。結果的にそうなっただけで、彼自身は真面目なのかと思いきや、どうやらそうでもない。井上の大学生時代について、本書では以下のように語られている。

「井上自身は、真面目な学生とは言いがたかったようだ。高校までは大人しいタイプだったが、大学に入ると人並みに色気づいた。学問や研究、スポーツにはあまり興味を示さず、むしろ気軽に女子学生に声をかけるナンパなタイプである」(本書より)

 学生時代の友人に取材をしても、誰もが口をそろえてこう言う。まさかあの井上くんが、と。やがて彼は「ソード」というパソコンベンチャーでアルバイトを始め、大学そっちのけでコンピューターのプログラムづくりにのめり込む。そして「ソード」の技術者のある言葉が、数学教師を目指していた井上の人生を大きく変えた。
「君は飽きっぽいから、ずっと教師のままでいられるかな。近い将来、パソコンはすごいことになるよ。このままうちで働かないか、たぶんそっちのほうが面白いぞ」(本書より)
 もし井上が真面目な学生で、ひたすら教師の道を目指していたのならば、おそらく上記のような言葉はかけられなかったはずだ。同時に彼が「ならずもの」であったからこそ、教師の道をいとも簡単に諦められたのではないだろうか。
 一方、彼自身も「ならずもの」を好み、新たな社員を募集する際には「無名のならずもの」を雇い入れたという。現在の「Yahoo! JAPAN」社長、川邊健太郎は、井上の人材の発掘について以下のように述べている。
「井上さんの残した名言はいくつもありますが、その中でも『自分に理解できない人は採用する』という言葉が印象に残っています」(本書より)
 井上の独特な感性から選ばれた者の中には、普通ならどこにも就職できないタイプもいたそうだ。だがそんな「ならずもの」たちの手によって築き上げられた「Yahoo! JAPAN」は、今や日本最大級のポータルサイトへと成長。もちろん真面目に務めることはいいことだが、ビジネスには時に「型破りなならずもの」も必要なのではないだろうか。ならずもの・井上雅博の生きざまを見ているとそう思えて仕方がないのだ。


(記事提供:BOOK STAND)

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