"伝説"や"誤解"が人々を惑わせる!? 長い歴史の中で「幻の世界」が生まれたワケ 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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"伝説"や"誤解"が人々を惑わせる!? 長い歴史の中で「幻の世界」が生まれたワケ

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世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語

エドワード・ブルック=ヒッチング,ナショナル ジオグラフィック, ,関谷 冬華

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 科学技術の発展やネットワークの普及により、多くの謎が解明された「地球」。今でこそさまざまな情報を入手できるものの、数百年前の人々はどのように"世界地図"を作りあげてきたのだろうか。
 コロンブスがアメリカ大陸を発見したのはわずか530年ほど前のことで、紀元前ともなれば海より先は未知の領域。そのため長い歴史を紐解くと、"伝説"や"探検家の誤解"などから生まれた「幻の世界」も数多く存在する。今回ピックアップしたエドワード・ブルック=ヒッチングの『世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語』は、そんな"幻の地図"の間違いや嘘が暴かれる刺激的な一冊だ。
 同書に収められた古地図の中で、「アトランティス」の名前は誰もが知るところではないだろうか。古代ギリシャの哲学者・プラトンが記した伝説の島であり、今なお実在していると信じて疑わない人も多い。プラトンは強大国の傲慢さを揶揄した「寓話」として物語を生み出しており、のちにアリストテレスはアトランティス伝説を"作り話"だと一蹴。また、エドワードも以下のように説明した。
「プラトンはおごれるものの寓話を見事に描いたが、あまりにも緻密な描写とアトランティスをめぐる熱狂のため、物語が持つ真の意味はかき消されてしまったようだ」(本書より)
 海に沈んだとされるアトランティスだが、伝説の島と同様に広大かつ深淵な海洋の世界も人々を惹きつける。オラウス・マグヌスによる北欧地図「カルタ・マリナ」は奇怪な姿をした生物があちこちに描かれ、神秘性に満ちた大作として1500年代から語り継がれている。海に棲む未知の生物は今でもロマンをかき立てるが、オラウスの意図は海洋生物に関する科学的知識を世界に広めることにあったようだ。
「登場する生物の中には、明らかに実在の生物の姿をねじ曲げたようなものもあるし、神話にしか登場しないような生き物もいる。だが、このような怪物たちを16世紀の船乗りたちは信じ、恐れてきたのだ」(本書より)
 また、人々の心を魅了してやまないのは"黄金伝説"も同じで、南米の黄金郷「エルドラド」は特に有名なスポット。1598年に作成された「神秘と黄金のギアナ国最新地図」には実在しない湖にエルドラドがあると記され、頭のない人間や南米の動物たちが空想的に説明されているという。エルドラドの伝説は多くの探険家を翻弄することになったが、黄金を求めた彼らの冒険心は現代の"トレジャーハンター"にも通じているのではないだろうか。
 一方で科学が進歩を遂げているはずの1800年代に、アメリカのオーランド・ファーガソン教授は「地球平面説」を提唱した。ファーガソン教授に限らず地球平面説は古くから唱えられており、「ヨハネの黙示録」には「わたしは大地の四隅に四人の天使が立っているのを見た」との一文が。「四隅」を文字通りに捉えれば、世界は平面であると支持できるという。しかし地球が球体であることは誰の目にも間違いのないことであり、"想像力"を超えた"科学力"が既に証明している。
「最終的に地球平面説は疑似科学として科学の外に追いやられることになったわけだが、時おりファーガソン教授のような固い信念を持つ人物によって復活させられ、表舞台に現れてくることがある」(本書より)
 1700年代に"存在を確認された"とヨーロッパに伝わったのは「パタゴニアの巨人」。イギリスのジョン・バイロン船長率いるドルフィン号が、新天地では身長2.6mもある住人ばかりが暮らしていたと報告したのだ。
 巨人伝説の元を辿ると世界1周を遂げたマゼラン艦隊の目撃証言が由来であり、ドルフィン号からの報告が証言を裏づけたことになる。ところがフランスの一流新聞社は巨人の目撃談について、イギリス船による"金目当て"の活動から目を逸らすための作り話だと報道。巨人と目された先住民も身長は1.8mほどで、エドワードは以下のように補足した。
「当時のヨーロッパ人の平均身長は5フィート5インチ(1.6m)しかなく、先住民の人々はとても大きく見えたのだろうが、『巨人』と呼ぶほどではなかったといえる」(本書より)
 多くの人々を翻弄してきた偽りの歴史。誇大な想像力やエゴが生み出してしまったと言っても過言ではないが、だからこそ物事の真偽を正しく持つ目が必要とされるのではないだろうか。伝説を追い求めることにロマンを感じるかもしれないが、"最初から存在しないもの"に踊らされることのないよう心がけたい。


(記事提供:BOOK STAND)

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