なぜ中国人は"パクる"のか? "パクリ遊園地"潜入で見えたその理由

BOOKSTAND
 近年、東京のみならず、日本各地の観光地で見かける機会が増えた、中国人観光客。観光立国を目指す日本にとってはなくてはならい存在ですが、一方で道を占拠したり、会話のボリュームが大きかったりと、ちょっとネガティブなイメージを抱く人も少なくないのでは。そうした中国人の行動も、彼らを取り巻く環境や思想の背景を知ると、見方が変わってくるかもしれません。


 西谷格さんの著書「ルポ中国『潜入バイト』日記」は、その名の通り、著者自らが中国の様々な場所に潜入することで、中国人の行動や考えの背景に迫った一冊。神奈川県出身の著者は、地方新聞の記者を経て、フリーランスとなって上海に住み、現地の様子をレポートしているのですが、その身を削った潜入取材からは「なぜ中国人はこういう行動をとるのか?」という素朴な疑問への答えが見えてきます。


 著者は、上海の寿司職人を筆頭に、中国の「反日ドラマ」のエキストラ、"パクリ遊園地"のスタッフ、高級ホストクラブのホストなど、中国であらゆる仕事に挑戦。さらに中国の婚活イベントに参加したり、日本で爆買い観光客のツアーガイドになったりと、あらゆる角度で中国人の姿に迫ります。


 "パクリ遊園地"では、パクリキャラクターの着ぐるみを着るべく、スタッフとして潜入。倉庫にパクリと思われるミッキーとミニーの着ぐるみを見つけた著者は、上司に「あのミッキーをかぶりたいんですが」と申し出ますが、「今は使っていない」と一蹴されてしまいます。控え室で他のスタッフに事情を聞いてみると「開園直後は現場の判断で使っていたが、上層部にバレて使用停止になったみたい。ミッキーやドナルドダックは著作権があるから、使ったらマズイのよ」とのこと。しかしその一方で、園内ではディズニーの白雪姫に出てくる「七人の小人」を思わせるキャラクターが堂々とパレードしていて、それについて突っ込むと「小人は大丈夫」「七人の小人に著作権はないから」ときっぱり。ビジュアルは明らかにディズニーを思わせるものであるにも関わらず、そう断言する姿には、いっそすがすがしさすら感じてしまいます。


 さらに、ファンタジーをテーマにした園内なのに、ラーメンやイカ焼きなどテーマを無視した食べ物ばかり売っていたり、パレードに使う曲がクラブで使うような激しいビートを刻んでいたりと、全体に作り込みがゆるいのも特徴。スタッフに至っては、接客業なのにスマホを見ながら店に立っていたり、勤務中は外出禁止にもかかわらず、自宅に帰って食事したり......と、隙を見てはさぼろうとする人が多いのだそう。


 しかしこのスタッフの姿勢こそ、中国の"パクリマインド"につながるものなのだと著者は指摘し、本書で次のようにつづっています。


 「中国には『上有政策、下有対策(上のものが政策を実施すると、下の者は対策を練る)』という言葉がある。国の法律から会社組織のルールに至るまで、下々の人間は常に『いかにして法の抜け穴を見つけるか』に心血を注ぐ。そのため法律やルールといったものはすぐに形骸化し、結局は上の人間の独裁的な思いつきですべてが決まることになる。中国社会は法治主義ではなく人治主義と言われるゆえんだ。中国の著作権法が機能していないのも、同じ構図だろう」


 これに加えて、著作権という概念が西洋由来のものであることも、パクリマインドの一因ではないかと分析。著作権という概念は18世紀以降にできたものらしく、比較的新しいことから「民主主義や法治主義といった西洋近代の価値観が根付いていない中国では、著作権がまともに保護されないのは当然かもしれない」と指摘。「中国人の本音を代弁するなら、どうして西洋人が勝手に決めたルールに従わねばならんのだ、と思っているはずだ」とつづっています。


 確かに、こうした国民性や著作権の歴史などを知ると、彼らがパクリに走ってしまう背景も見えてきます。このほかにも、中国が「反日ドラマ」を作る意外な背景や、上海の寿司店で見た衝撃の調理風景、高級ホストクラブで見た富裕層の姿など、同書では潜入したからこそ見えてくる、本当の意味でリアルな中国の姿が浮き彫りになります。読み終わるころには、街で見かける中国人観光客への印象も、少し違ったものになっているかもしれません。

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