理不尽なことも多いビジネスシーンでは、情熱を持って進めてきたプロジェクトが突然中止になることもしばしば。もし突然上司から、"会社の方針で、この計画は中止になった"と言われたとしたら、あなたなら何と答えるでしょうか。



 思わず、"えーっ? なぜですか?"といった感情的な一言を言ってしまうかもしれません。しかし、こうした感情的な一言では、プロジェクトが中止になったという、いわばマイナスの状況を変えることができないばかりか、上司の反発すら買ってしまう恐れがあります。



 マイナスの状況をプラスの状況に変えるためには、"感情的な一言"ではなく、"仮説の一言"を発するようにしましょう。冒頭のように上司から言われたのであれば、"予算が出なくなったということですか?"といったように、冷静に仮説を立てた問いかけをすることが重要。これにより、前向きな話し合いへと会話は展開し、上司と一緒に解決策を考えるなど、プラスの状況を作り出すことができるのだといいます。



 「仕事ができる人は、状況に応じて発する一言がうまい人」(本書より)だという鶴野充茂さん。本書『頭のいい一言「すぐ言えるコツ」』では、さまざまなビジネスシーンに応じた、効果を発揮する一言の数々を紹介していきます。



 たとえば、会話をしているなかで、ついつい言ってしまいがちなのは"なぜ?"という理由を聞く一言。しかし、この一言は、相手が答えにくいあいまいな質問になってしまうと同時に、詰問調になってしまうため、相手にキツい印象を与えてしまいます。"なぜ、このお仕事に就かれたのですか?"と問えば、"もっといい職業があったのでは?""そんな仕事をする気持ちが理解できない"といった、否定的なニュアンスすら与えかねません。



 そこで、こうした場合には、"なぜ"ではなく"どういうきっかけで"という一言を用いましょう。"どういうきっかけで、このお仕事に就かれたのですか?"と、きっかけを聞くようにすれば、なぜの一言がもたらす、あいまいさや詰問調のキツさがなくなり、相手を不愉快にさせることなく会話が進んでいくのだといいます。



 さらには、この一言を言える人は必ず成功するという、"成功を引き寄せる一言"もあるのだそう。数多くのビジネスパーソンを見てきたなかで、出世する人たちには、とある共通する姿勢があることを発見したという鶴野さん。それは、"私に任せていただけますか?"という一言が口グセになっており、多くの人が面倒だと思うような役を進んで引き受けているということ。



 「成功者は、ただ何もせず成功を待っていたわけではありません。めんどうなことを"進んで引き受ける"ことで、成功が舞い込んでくる状況を、自ら作り出していたのです」(本書より)



 たとえば、コミュニティの幹事やボランティア団体の運営などを引き受ければ、必然的にいろいろな人と連絡を取り合うため、結果、情報や人を呼び込むことに。チャンスを自ら作り出しているのだと指摘します。



 ビジネスシーンにおけるコミュニケーションが円滑に進み、結果が出せるようになり、出世へと一歩近づく――その鍵は、自身の発するたった一言が握っているのかもしれません。