同書によれば、吃音は言語発達の盛んな2~4歳ごろに発症するものであり、「親のしつけが原因」「精神的な弱さが原因」というのは、まったくの誤解。「最新の研究でも、吃音を発症する子は言語機能が良い子が発症するデータが示され、急激な言語発達にたまたま生じる副産物」(同書より)と言われていることから、菊池さんも診察の場で"頭が良すぎるからだよ。頭の回転が速すぎて、口がついてこないからだよ"と肯定的に伝えるようにしたところ、子どもたちも笑顔になったことがあったのだとか。



 また同書の中では、吃音と併存する場合もある症状、「場面緘黙(ばめんかんもく)症」に言及していることも見逃せません。



 この場面緘黙症とは、家庭では普通に話せるのに、幼稚園や学校など特定の場面では一転して話すことができない症状で、200人に1人の割合で存在し、吃音や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの問題と併存する場合もあります。 いわゆる"人見知り"や"恥ずかしがり屋"との違いは、1ヵ月以上の長期および広範囲で症状が継続し、幼稚園や学校などの社会生活に支障が出るほど症状が強いことです。



 理解が進んでいない現状では、見過ごされ放置されることも多々ありますが、菊池さんは「吃音と同様に『わざとじゃないんだよ』と周りの友だちに伝える必要があります」(同書より)と述べ、早期支援の必要性を訴えています。



 同書「あとがき」で「『吃音のある子のママは悪くない』この一言を伝え、応援するために、本書を書きました」(同書より)と述べるとおり、自身の臨床体験も交えて、菊池さんがママたちへのエールを込めて執筆した同書は、吃音に悩む子どもの親や関係者なら必読の1冊となっています。





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一般社団法人 日本言語聴覚士協会

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