仕事ができる人たちに共通する、あるひとつの特徴――20年以上にわたって数千軒もの鮨屋や割烹、レストランなどに通ってきたという雑誌「日経トレンディ」元編集長の北村森さんは、新著『仕事ができる人は店での「所作」も美しい』のなかで、仕事で有能な人に共通する特徴として、飲食店やホテル、旅館での所作が美しいことが挙げられると指摘します。



 接待、会食からプライベートでの食事、宿での一夜の過ごし方におけるまで、さまざまな場面で問われる所作の数々。店の人や相手に不愉快な思いをさせることなく、うまく立ち振舞えているでしょうか。



「店や宿の人といい関係を結んで、連れの女性や同僚、あるいは仕事先の人を楽しませることにつなげる。それが回りまわって、結局は自分を光らせることができる」(本書より)という北村さん。



 本書では、北村さんが自らの経験を通して学んだ、飲食店やホテル、旅館において気をつけるべき所作、その41のポイントが綴られていきます。



 たとえば、気をつけなければならないポイントのひとつとして挙げられるのは、割烹や料亭を訪れる際、予約した時刻ぴったりで暖簾をくぐるということ。お店はお客さんが来る頃合いに合わせて料理を仕込むため、早すぎても遅すぎても厨房を混乱させてしまうのだといいます。



 そして重要なのは、席につき、料理が運ばれたならば、出されたものはすぐに食べるということ。とくに日本料理における椀、天ぷら、鮨に関しては、できたてが最も美味しい状態であり、料理人や職人からすれば、その状態のうちに食べて欲しいもの。そのため、相手との話がどんなに盛り上がっていても、椀が運ばれたならば談笑をやめて、すぐさま食すのが良いのだそうです。



 あるいは、日本料理屋を訪れる際、みなさんは腕時計や指輪、ブレスレットの類いを身につけているでしょうか。せっかくの機会、いつもより高級な腕時計を身につけて行くという方もいらっしゃるかもしれません。



 しかし、北村さんは、日本料理屋を訪れる際は、あらかじめ装飾品は外しておくべきだといいます。



「料亭や割烹では、料理を盛りつける器を大事にしています。その器に装飾品が無造作に当たったら、器を欠けさせてしまう事態を招きます。(中略)装飾品をあれこれと身に着けた客が来たとき、場合によっては、本来使うはずだった、いい器を引っ込めてしまうこともあるそうです」(本書より)



 そして、こうしたちょっとした気遣いができるか否かが、仕事における有能さにも繋がっていくのだといいます。つまり、「指輪をしたままで塗りの椀を手に取れば、表面の漆をだめにしてしまう、大きなネックレスであれば、椀を口に近づけたときに、かちんと当たってしまう。そういう想像力を働かせられる人は、仕事のふとした場面でも、同じように先を考えられる人であるはず」(本書より)だと指摘します。



 本書で紹介される41のポイントを参考に、自身の所作、今一度自らに問いかけてみてはいかがでしょうか。