千円札の顔としてもおなじみの偉人、野口英世。今年は、英世がアメリカから一時帰国した1915年から100年目。4月1日には、彼の生前の功績を伝える野口英世記念館もリニューアルオープンするなど、改めて注目されています。



 野口英世と言えば、貧農の家庭に生まれ、幼少の頃に囲炉裏に落ち、左手に火傷を負いながらも、苦学の末に細菌学者になった人物として知られています。しかし、その一方で、英世には、意外な一面がありました。



 精神科医・福井裕輝さんによる本書『ストーカー病―歪んだ妄想の暴走は止まらない―』によれば、実は、英世はある女性に"ストーカー行為"をしていたというのです。



 被害に遭ったのは、英世が20歳の時に出会った、6歳下の女学生・山内ヨネ子。通っていた教会でヨネ子に一目ぼれした英世は、思いの丈をつづった恋文を毎週のように送り付け、ヨネ子を困惑させます。周囲に諭されたこともあり、ラブレター攻撃はいったん中断しますが、上京した英世は、女医を目指して医術開業試験予備校に通っていたヨネ子と再会。ヨネ子の下宿先までたびたび押しかけたり、研究用の頭蓋骨を贈ったり、2人の名字を刻んだ指輪を贈ったり......こうした一方的で自己中心的な迷惑行為は、5年間にも及んだそうです。



 英世の生きた時代をストーカーという言葉が生まれる前まで、このような行為は、「変わり者」や「偏執的な人」扱いか、あるいは「痴情のもつれ」とみなされていました。しかし今では、ストーカー行為は法律で規制されているれっきとした犯罪。ストーカー行為の挙句、対象者の命を奪ってしまう凄惨な事件も相次いで発生しており、社会問題化しています。

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