著者の住んでいるマンションでは、狭い空間で人が集まるのを避けるためエレベーターには一度に一人(もしくは一家族)しか乗れない様になっている。また、スーパーなどでは一度に入れる客の数を制限して店内が混まないようにして、人が密集しない様に工夫をしている。握手をする人も当然いない。

 ウイルスの感染拡大を防ぐために、自宅にずっと待機しているのは無理だが、安全とされる距離を取りつつ日常生活をするというのはいかにもアクティブなニューヨーカーには合っているかも知れない。

ニューヨーク市では散歩や運動のために外出するのは許可されているが、他人との距離を少なくとも6フィート(約180センチ)取らなければならない(撮影・新垣謙太郎)
ニューヨーク市では散歩や運動のために外出するのは許可されているが、他人との距離を少なくとも6フィート(約180センチ)取らなければならない(撮影・新垣謙太郎)

 著者の自宅の近所の公園で一人壁に向かってテニスの練習していたディミトリさん(55)に話を聞いてみたが、外出制限が行われてから毎日一時間は公園で運動をしているという。しかし運動する際には一人きりで、必ず他人と距離を取って行う。買い物も直接お店に行くことは止めて、すべてデリバリーで頼んでいる。

「この様な非常事態下では、(外出制限などの)極端な対策は仕方ないよ」

 そう納得していたが、近くのバスケット・コートでは6人ほどの若者たちが激しく体をぶつけ合いながらバスケットボールを楽しんでいた。

「彼らの様な連中のおかげで、この公園も閉鎖にならなければいいけど」

 それを見たディミトリさんは、そう心配していた。

 実際、ビル・デブラシオNY市長はこれまでにニューヨーク市内にある10カ所の公共の公園を閉鎖した。理由は利用者が多すぎて、他人との距離を保てないからということである。

「ソーシャル・ディスタンス」を守りながら列を作って入店を待つスーパーの利用客たち(撮影・新垣謙太郎)
「ソーシャル・ディスタンス」を守りながら列を作って入店を待つスーパーの利用客たち(撮影・新垣謙太郎)

 さらに市長は「ソーシャル・ディスタンシング」を重要視し、このルールを徹底させるために、守らない市民には250ドルから500ドル(約27,000~54,000円)までの罰金を課すと先日、発表した。

 3月25日の会見ではクオモ州知事は「ソーシャル・ディスタンシング」の効果が出ていることを強調した。それまでは感染者数(入院した者)が48時間(約2日)ごとに2倍になっていたが、「ソーシャル・ディスタンシング」を導入したことで、2倍になる速度が4・7日まで減速したという。

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課題は新型ウイルス検査不足