「宇宙戦艦ヤマト」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「銀河鉄道999」――。戦闘機の空中戦が頭上で、毎日繰り広げられるようななかで少年期を過ごした僕が、戦いを作品のなかで描くのはごく自然な流れでした。同時にストーリーのなかで、悪役にも人間味あふれた感情を描き、互いの国籍に敬意を払い同じ地球人という設定を大切にした。その根底には、戦争下で暮らし、周囲の大人から戦争の意味を学んだ部分が大きかった。

 僕自身も米軍を憎んだことはありません。南方戦線にいたおやじからよくこんな話を聞きました。戦闘機から敵を撃とうとボタンを押す瞬間、「この敵兵にも家族がいるのだろう」といった思いが頭をよぎり、何度もためらったそうです。戦争が終わって、おやじは真っ黒になって炭焼きをしながら家族を養いました。移り住んだ北九州の小倉では、地べたにゴザを敷いて八百屋のおやじになったんです。パイロットの仕事の口もあったようですが、二度と飛行機の操縦桿を握ることはありませんでした。

 高校まで思春期を過ごした小倉は、占領軍でいっぱい。貧しさと華やかさが混在した街でした。僕らが住む貧しい長屋へ、痩せていた元兵隊さんが革のベルトを差し出しながら食べ物を乞いに来るんです。戦場から戻ると家族はみな死んでいる。そんな状況に絶望し、線路に横たわって自殺する人もいた。真っ二つに裂けた胴体。それでも、青白い足の指は枕木に踏ん張ったまま。他方、日本人の女性を連れて百貨店で両手いっぱいに買い物をする占領軍らの華やかな光景を目の当たりにするんです。敗戦国の屈辱を嫌というほど味わった。

 いいこともありました。占領軍の娯楽のために本屋や映画館がたくさんありました。このときに見た華やかな外国女優の姿は、作品で描く美しい女性の下地になっています。

 僕の漫画は、たいてい少年を主人公にしています。

 しかし時に、そして切れ長の目を持つ美しいクイーン・エメラルダスや、メーテルといった剣を持って戦う強い女性も描きました。

 僕のばあさん(祖母)は、侍の流れを汲む凛とした女性でした。 

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「無意識にこの女性を描き続けてきた」