西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「白隠禅師の呼吸法」。

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【患者の権利】ポイント

(1)86年間で、良くなったところ、悪くなったところ

(2)がん治療の現場に医療本来の温もりが戻ってきた

(3)医学と医療の違いが理解されるようになってきた

 先日、「先生が生きてきた86年間で、世の中の良くなったところ、悪くなったところはどこですか」という質問を受けました。

 悪くなったところは、すぐに思い浮かびます。地球という場のエネルギーがここのところ低下しているように思うのです。地震、台風、大雪といった天災の多さはどうでしょう。さらにコロナ禍とウクライナ紛争です。地球の滅亡も絵空事ではないように思えてきました。ここらで乾坤一擲(けんこんいってき)、皆が力を合わせて、何とかしなければいけません。

 さて、良くなったところですが、いろいろあるもののなかで筆頭は、がん治療の現場に医療本来の温(ぬく)もりが戻ってきたことだと思います。

 私が中西医結合によるがん治療を旗印にかかげ、病院を開設したのが1982年。この頃のがん治療の現場は殺伐としていました。私の病院には、西洋医学ではもはややることなしと見放されたがん患者さんが、たくさんやってきました。その患者さんたちが、異口同音に大学病院やがん専門病院の医療環境の悪さを嘆くのです。主治医さんの仕打ちに怒りをあらわにする人も少なくありませんでした。この現状を変えたかったのですが、長年びくともしませんでした。ところが、5、6年前から明らかに変わってきたのです。うれしい手応えを感じるのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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