ジャーナリストの田原総一朗さんは、防衛費の増額を愚策だと指摘する。
* * *
岸田文雄内閣が12月16日、外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」の改定を閣議決定した。
歴代政権が戦後一貫して否定してきた敵基地攻撃能力の保有や、防衛関連の予算を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に倍増させることを明記した。
そして自民、公明両党は、財源の一部に充てるため、所得税などの増税方針を決めた。
これは戦後日本の安全保障政策の大転換であり、憲法に基づく専守防衛の形骸化だと、いくつもの新聞が厳しく批判した。
毎日新聞が17、18日に実施した全国世論調査では、岸田内閣の支持率は25%で、11月に実施した調査の31%から6ポイント下落していて、21年10月の政権発足以来最低となった。不支持率は69%で、前回よりも7ポイント増加した。
毎日新聞は「岸田文雄首相が防衛費増額の財源について、1兆円強を増税で賄う方針を示したことが支持率低下につながった」と捉えているようだ。
もっとも、防衛費を大幅に増やす政府の方針については、「賛成」が48%で、「反対」の41%を上回っているのである。なお、年代別では、50代以下は「賛成」が「反対」より多いのだが、60代以上は「反対」が「賛成」を上回っている。
ここで記しておきたいのは、「専守防衛」についてだ。中曽根康弘内閣時代の出来事である。
1984年、私は中曽根首相に「専守防衛とは極めて危険な政策ではないか」と問うた。
第2次大戦の末期に、沖縄が米軍に占領されたとき、軍部は「本土決戦」を打ち出した。だが、本土決戦などやれば、おびただしい数の日本人が命を失うことになる。そこで鈴木貫太郎首相は、本土決戦を避けるためにポツダム宣言を受諾した。
だが、専守防衛とは、その本土決戦をやるということではないのか。私が問うと中曽根首相は、「それはまったく違う」と大きく否定した。そして、「専守防衛とは、米国の抑止力によって日本の平和を守ってもらうことで、日本は戦わないということだ」と説明した。