カズダンスとは、「キング・カズ」こと三浦知良選手がゴールを決めた際に見せるブラジル仕込みのステップと踊りで、1993年Jリーグが発足した頃に大流行し、今や日本サッカーの代名詞とも言えるクラシカルなアクションです。もちろん、三浦選手は50歳を過ぎてなお現役であり、故にカズダンスも決して過去の産物ではありません。それでもやはり2022年の木村拓哉が踊るカズダンスが想起させるものは、ただひたすら「平成み」に尽きます。確かに「町中華でサッカー観戦に興じる中年男性」を描くプロットとして、今年五十路を迎えたキムタクとカズダンスの掛け合わせは見栄え的にも完璧です。思えば芦田愛菜さんとのCMで「時代に乗り遅れたオヤジ感」を匂わせていた頃から兆候はありましたが、今回のカズダンスは、常に時代の先端をひた走ってきた木村拓哉もいよいよ「クラシック」の領域に入ったことを決定づけるものとなったのではないでしょうか。

　せめて、予め台本や絵コンテに「カズダンス」が盛り込まれていたのではないと信じたい。あれはあくまでキムタクならではのアドリブ。あのような場面でカズダンスをやってのけてしまう木村拓哉の潔さと無防備なまでのサービス精神こそが、彼の最大の魅力なのですから。何よりも50歳のキムタクが踊るカズダンスが、これまた様になっていてカッコイイのです。ワールドカップ恐るべし。

ミッツ・マングローブ／1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場～語り亭～」「5時に夢中！」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

※週刊朝日 　2022年12月16日号

著者プロフィールを見る
ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ／1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場～語り亭～」「5時に夢中！」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

ミッツ・マングローブの記事一覧はこちら