アオイヤマダ/ 2000年生まれ。長野県出身。東京2020オリンピック閉会式ソロパフォーマンス。ダムタイプ「2020」出演。そごう美術館でのひびのこづえ展「森に棲む服」、熊本市現代美術館ほかにて〝ROOT:根〟パフォーマンス、Netflixドラマ「First Love 初恋」に古森詩役で出演するなど、俳優業にも進出。ハイブランドのCMにも多数出演。(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
アオイヤマダ/ 2000年生まれ。長野県出身。東京2020オリンピック閉会式ソロパフォーマンス。ダムタイプ「2020」出演。そごう美術館でのひびのこづえ展「森に棲む服」、熊本市現代美術館ほかにて〝ROOT:根〟パフォーマンス、Netflixドラマ「First Love 初恋」に古森詩役で出演するなど、俳優業にも進出。ハイブランドのCMにも多数出演。(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

 一つだけ確信していることがある。出会いこそが人生である、と──。東京2020オリンピック閉会式でソロパフォーマンスを披露し、世界中の人々を魅了したアオイヤマダさん。表現者として大切にしていることとは。

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 2020年秋のある日──。KAAT神奈川芸術劇場のチケット売り場には、「星の王子さま」の当日券を求める人たちで、長蛇の列ができていた。サン=テグジュペリの最も有名な小説の珠玉の言葉を、音楽とダンスで表現するという試みは、評判が評判を呼び、(コロナ対策のために席数を半分に減らしながらも)3階席まである大空間が連日、満員の観客で埋めつくされた。コンテンポラリーダンスの舞台としては異例の出来事だった。その伝説の舞台で、王子を演じたのが彼女だった。

「3年近く前に、作品の演出・振り付け・出演を務めた森山開次さんから『一緒にやりませんか?』と声をかけていただきました。その時点では、どんな作品になるのかイメージはできなかったのですが、森山さんの活動を追っていくうちに、私自身も『こういう表現を目指していきたいな』と感銘を受けたことも多くて……。自分の可能性を広げるためにも、挑戦することに決めたんです」

 とはいえ、いざ稽古が始まってみると、尊敬する先輩たちに囲まれての王子役ということもあり、プレッシャーに押しつぶされそうにもなった。

「緊張しすぎて、当時はご飯を食べられなくなったこともあったし、プレッシャーのあまり吐いてしまうなんてことも初めて経験しました。何日も続く公演の中で、同じことを繰り返すのもほぼ初めての経験で。私は王子としてステージで泣いたり笑ったり、いろんな喜怒哀楽の表現をするのですが、『お客さんは退屈していないかなぁ』とかすぐ心配になっちゃう。王子として感情を入れすぎて、本当に悲しくなって泣いていると、次の瞬間は嬉しくなるみたいな、その感情の変化を1週間続けていたら、最後は自分の感情が売り切れて、空っぽになったみたいな感覚も味わいました」

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