森保一監督。ドイツ戦に勝利した翌24日の練習で(写真/アフロ)
森保一監督。ドイツ戦に勝利した翌24日の練習で(写真/アフロ)

 カタールW杯の初戦で強豪ドイツを相手に逆転勝利を飾った日本代表。背景には、森保解任論で強まった指揮官と選手の結束力があったという。日本代表は「新しい景色」を見ることができるのか。本当の戦いは始まったばかりだ。

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 1試合でこれほど評価がひっくり返る指揮官は、珍しいのではないだろうか。サッカー日本代表の森保一監督だ。

 11月23日に迎えたグループステージ初戦のドイツ戦。W杯4度優勝の強敵相手に、サッカー史に残る逆転勝利を飾った。前半は防戦一方。33分にPKで先制されると、自陣でドイツの猛攻をしのぐのが精いっぱいだった。2点目を失ったら試合が壊れていただろう。守備に奔走する選手たちは肩で息をしていた。このままでは持ちこたえられない。森保監督が動いた。冨安健洋を後半開始から入れて4バックから3バックに変更し、守備陣を立て直すと、三笘薫、浅野拓磨、堂安律、南野拓実と攻撃的な選手を次々と投入する。トップ下の鎌田大地がボランチに下がり、三笘と伊東純也が左右のウィングバックに。南野と堂安が2シャドーとなり、浅野が1トップで前線を走り回った。

 森保監督が就任した2018年以降で、ここまで大胆に戦術変更した試合はなかった。ただ、日本代表を取材するスポーツ紙記者は違った見方を示す。

「森保監督は『選手交代が遅い』『試合の流れを読む能力が高くない』と言われますが、戦術を変える時は劇的に変える。W杯アジア最終予選がその一例ですね」

 昨年10月。オマーン、サウジアラビアに敗れて1勝2敗と本大会出場が危機的状況になり、「森保解任論」が高まる中、4戦目のオーストラリア戦を迎えた。ここで大胆に戦術変更に踏み切る。これまでの基本陣形だった4-2-3-1から4-3-3へ。中盤の形を正三角形から逆三角形に変更する。田中碧と守田英正のボランチに、中盤のアンカーで遠藤航を据えた。前半8分に田中のゴールで先制。後半に直接FKで同点に追いつかれたが、試合終盤にオウンゴールで勝ち越して2-1で辛くも逃げ切る。ここから6連勝と息を吹き返し、7大会連続W杯出場を決めた。

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