支援用のパンを袋詰めするボランティアたち
支援用のパンを袋詰めするボランティアたち

 11月5日午後1時半過ぎ。東京・新宿駅から西へ徒歩7分ほどにある東京都庁地下1階の都道下通路には、500人を超える行列ができていた。午後2時から始まる食料品の無料配布を待つ人たちだ。先頭は午前6時ごろから待ち続けているという60代の求職中の男性。11時過ぎから行列が延び始めたという。

 主催は生活困窮者の支援をするNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」と「新宿ごはんプラス」。20人ほどのボランティアたちがポリ袋に小分けした食料品のセットをトラックから降ろしていた。

「ここでの食料品配布は『新宿ごはんプラス』が8年前に実施したことに始まります。当時は隔週土曜日の事業で、手作り弁当の配布をメインに、医療や生活、労働に関する相談にも乗りながら支援をしてきました」

こう話すのは、「認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」理事長で「新宿ごはんプラス」の共同代表を務める大西連さん(35)。初回は周辺で暮らすホームレスの人たちを中心に約40人が利用し、以降、60~80人前後で推移していた。ところが2020年2月ごろから、毎回100人を超えるようになった。

「コロナ禍による失職や就業時間の削減による収入減の影響で、ホームレス以外の生活困窮者が増えたからです。それで20年4月から『もやい』も加わって毎週行うことになりました。そして、お弁当を作るには人手が足りないし財政的にも厳しいため、アルファ米や缶詰、パンなどすぐに食べられて日持ちもする食料品の配布に切り替えました」(大西さん)。

 20年6月13日には160人余りの行列ができ、都庁側が「使用許可を取っていない」と注意する事態も起きた。両団体はそれをはねのけて支援を継続。21年2月には200人超えが常態化し、今年1月には500人を超えた。

 大西さんが続ける。

「10月29日には過去最多の631人に食料品セットをお渡しました。前週22日が581人でしたから一気に50人も増えてしまったのは想定外で、配布セットが足りなくなりました」

 何かと出費が多い月末だったこともあるが、「景気は依然として低迷し、先行きが不透明。加えて食料品や日用品などの値上げに追い打ちをかけられ、『生活防衛のため食事の支出をとにかく減らしたい』という方が増えているからだと思います」(大西さん)。

次のページ