ユニクロ世田谷千歳台店内に新規オープン
ユニクロ世田谷千歳台店内に新規オープン

「ヨーロッパには家具を長く使う文化や土壌があります。アンティーク家具がたくさんあるのもそのためです。欧州の家具職人たちから、日本は“家具の墓場”と言われる。正しく修理できる職人がいないからです」

「正しく」と西原さんが言うのには理由がある。

 日本人はもともと「もったいない」の精神から、家具も壊れれば日曜大工で直したり、工務店に頼んで直したりする人は多い。しかし、その多くが釘打ちやねじ止めをするので、せっかく職人が釘を使わずに組み立てた家具の寿命を縮め、修復不可能になると粗大ゴミとして捨てるしかなくなってしまうのだという。

10年前に「フィズリペアワークス」をオープンさせた西原さん。家具修復の技術も指導している
10年前に「フィズリペアワークス」をオープンさせた西原さん。家具修復の技術も指導している

 西原さんは力説する。 

「家具はそもそも古くなれば修理する前提で作られています。職人が丁寧に作った家具は驚くほど長持ちします。過去に1700年代製の椅子を修理したことがありますが、上質な木材は丁寧に使えば数百年でも使えます」

 フィズリペアワークスでは長野・八ケ岳高原ロッジの音楽堂で、破損した椅子が廃棄されていると知り、修理を申し出た。修理を終え、生地も張り替えて売り出したところ即完売したという。

「新品の状態をいかに保つかを重視してしまいがちですが、家具は経年劣化を楽しめるもの。壊れたらすぐに捨ててしまう“消費物”ではなく、修理しながら長く使う道具として家具と向き合ってほしいと思います」

「コロナで皆さんが自粛していた時期は受注がぱったり止まりました。やはりカバンは持ち歩くもので、そもそも外出しなければ使われることも少なくなりますから」

 そう振り返るのは伊藤鞄製作所(東京都足立区)の修理・リメイク事業部を率いる渡邉誠さんだ。自粛期間が解除されてからは、コロナ前に負けぬほど修理の依頼が増えたという。修理専門の工房を訪ねると、職人の一人が誰もが知る高級ブランドのバッグの内張りをきれいに張り替えていた。

 渡邉さんが説明する。

「カバンは体と接した形で持ち運ぶものなので、長く使うほど体になじみ、風合いも出る。古くなっても捨てられず押し入れの奥に眠っている方が多いのでしょう。自粛中に部屋を片付けたとき、そんな懐かしいカバンが出てきて修理することを思い立った、という依頼が多いですね。亡くなった夫が買ってくれた思い出の品や、両親にもらったカバンを今風に小さくして使いたいとか、お客様ごとに依頼の内容もさまざまです」

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