ロッテ投手時代の村田兆治さん(1979年)
ロッテ投手時代の村田兆治さん(1979年)

 ストイックさと一途さに驚かされた。そして取材中、彼が何度も「倫理観」という言葉を口にしたのも印象的だった。

 だから9月下旬、羽田空港の保安検査場で女性検査員に暴行を加えたとして現行犯逮捕された件には違和感を禁じ得ない。今回話を聞いた記者も皆、同意見だった。思っていることを言葉にするのが苦手で、取材に時間のかかる“記者泣かせ”。思いがうまく伝わらないとイライラして声を荒らげることがあり、9月の件は、それが悪いほうに作用してしまったのでは、と。私も、そう思えて仕方ない。

 私が書いた記事の最後、彼は、こう語っていた。

「人は誰でも人生という大切なマウンドに立っていて、簡単に降板するわけにはいかない……最後まで諦めずに人生というプレーを続けなくてはいけない。完投できた者こそが、色々なことはあったが幸せな人生だったと、笑顔を浮かべることができる。私は、そう思って生きている」

 村田さんが「不本意だ」と漏らす顔が浮かんできて仕方ない。

(渡辺勘郎) 


週刊朝日  2022年11月25日号