尾野真千子(おの・まちこ)/ 1981年11月、奈良県生まれ。「萌の朱雀」(97年)で映画主演デビュー。最近の主な映画出演作に「茜色に焼かれる」(2021年)、「ハケンアニメ!」「こちらあみ子」(ともに22年)など。撮影/写真映像部・高野楓菜 ヘアメイク・石邑麻由 スタイリスト・江森明日佳(ブリュッケ)
尾野真千子(おの・まちこ)/ 1981年11月、奈良県生まれ。「萌の朱雀」(97年)で映画主演デビュー。最近の主な映画出演作に「茜色に焼かれる」(2021年)、「ハケンアニメ!」「こちらあみ子」(ともに22年)など。撮影/写真映像部・高野楓菜 ヘアメイク・石邑麻由 スタイリスト・江森明日佳(ブリュッケ)

 全国の行方不明者数は年間約8万人。ドキュメンタリー出身の久保田直監督が「失踪者リスト」から着想を得た映画「千夜、一夜」。田中裕子演じる、30年もの間、失踪した夫を待ち続けるヒロインと対照的な役を演じた尾野真千子に話を聞いた。

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 舞台は北の離島の美しい港町。登美子(田中裕子)は、突然姿を消して30年経った夫を今も待ち続けている。幼なじみの漁師の春男(ダンカン)は、そんな登美子に思いを寄せ続け、彼も彼女が振り向いてくれることを待っているが、登美子がそれに応えることはない。

 ある日、登美子のもとに、2年前に失踪した夫の洋司(安藤政信)を捜す奈美(尾野)が現れる。奈美は自分の中で折り合いをつけ、前に進むために夫が「いなくなった理由」を探していた……。愛する夫をずっと待ち続ける登美子とは対照的な女性、奈美が尾野の役どころだ。出演を決めた理由をこう話す。

「奈美という『待つ女』に引かれたのだと思います。田中裕子さんが演じる登美子は30年夫を待ち続けていますが、奈美の場合、夫がいなくなって2年。夫に失踪されてからの2年は、並々ならぬ感情を持っていたと思いますが、それをなんとか乗り越えたはずです。

 この映画の奈美は、そんな夫への思いを2年経ってようやく整理をつけることができた後のことが書いてある。次の人生に進み始めようとしている彼女を演じることが大切でした」

 尾野にとって、作品に出演するかどうかはまず台本を読むことが最優先。常に仕事を抱える売れっ子だけに、一つの作品が終わればそのキャラクターがすっかり抜けて、次の作品へ。役を引きずることはない。

「引きずれないんですよ。性格みたいです。ただ、一つのお仕事の間に別のお仕事を入れるのは苦手です。一つの作品に集中したいので、撮影中にオファーをいただいても脚本を読めない。作品の合間の自分の気持ちに余裕がある時に読ませていただくので、すごく時間がかかって迷惑をおかけすることにもなるのですが……」

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