映画「あゝひめゆりの塔」の場面 (C)日活
映画「あゝひめゆりの塔」の場面 (C)日活

 米軍機に銃撃されて逃げたり、砲弾が炸裂したりする場面では、

「弾着っていうんですけど、爆発するように(爆発物を)地面に仕込んで。危険で。こことこことここに仕込んでいるからというように、技術の方が言って下さって。とてもとても緊張しました」

 冒頭で触れた自決のシーンは、石廊崎の最奥で撮影した。命綱もつけていなかったそうだ。

「手榴弾を持って口でキュッと雷管を(引っ張り)、自分の体、爆発しても大丈夫な(防弾チョッキのような)ものを着ているんですけど、そこに押し当てて爆発して死ぬというシーンだったんですね。ところがどうしていいかわからないくらい興奮してしまって。口で抜いた後に、押してはいけないボタンを押してしまったんですね。それでほほをやけどしてしまって。その日にそのシーンを撮らなければいけなくて。絆創膏を貼ってドーランを塗って撮影をしたんですね。モノクロ映画なので皆さん分からないと思いますけど」

「戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河」の場面 (C)日活
「戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河」の場面 (C)日活

 撮影が終わった後、パスポートを取得して沖縄に渡った。映画の舞台となった場所を訪れて、花を供えて慰霊した。その経験から、「観光では行けない」と強く感じた。そのため、プライベートで沖縄を初めて訪れたのは、5年前だという。

「ずっと“戦後”であってほしい」と切に願う吉永さん。広島・長崎の「原爆詩」の朗読や、戦没画学生の作品を集めた美術館「無言館」(長野県上田市)の支援、パーソナリティーを務めるラジオ番組に戦争体験者を招くなど、反戦・反核の活動を続けてきた。

 それだけに、ロシアによるウクライナ侵攻と、核兵器が使われる可能性の高まりに、強い危機感を抱いている。

「ウクライナの方たちがつらい思いをしていらっしゃる。世界で、いろんなところで起こっている。そんな中で私たちが考えないといけないのは、軍備を拡張するというのではなくて、核兵器を廃絶する、禁止するということ。原爆を二度受けた私たちだから、皆で声を出して言わないといけないと思っているんです。私に何ができるかというと、朗読するくらいしかできないんですけど、皆さん、心の中で、そういうことをぜひぜひ考えていただいて」

 秘める思いを穏やかな話しぶりで訴えた。

(本誌・菊地武顕)

※週刊朝日オリジナル記事