佐久間宣行さん(右)と林真理子さん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
佐久間宣行さん(右)と林真理子さん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

 テレビ東京のプロデューサー時代から、数々のヒット番組を制作してきた佐久間宣行さん。作家の林真理子さんとの対談では、テレビ業界の後先まで、長年、現場で感じたお話をしてくれました。

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林:インターネットのほうでもお仕事されてますけど、「テレビの時代はもう終わった」とか言われてますね。本当にそう思います?

佐久間:テレビの制作者はおもしろい人たちがいますよ。だけど、Z世代と言われている10代とか20代の人にとってはテレビが、「こんな不便なフォーマットあるのかよ」って感じなので、新しいマーケットに対してシステムがぜんぜんマッチしてないなと思います。ことしからネットで同時に番組が流れたりするんですけど、ちょっと遅すぎたなと思います。

林:でもテレビ局っていまも就活では何百倍という競争率ですよね?

佐久間:そうですね。でも、テレビ局に入っても、「ADの期間が長いな」と思って辞めて、YouTuberのディレクターになる人がけっこういます。

林:せっかく入ったのに、それを手放してまで、YouTuberのディレクターになろうと思ってるんですか。

佐久間:テレビの人たちって、20代後半からやっとディレクターになれて、30代で活躍して、40代で管理職になって、保障もちゃんとある。でも、若い人たちからすると、「ほんとに俺たちをこの組織が一生食わしてくれるの?」みたいなのがあるんだと思いますね。だから20代で大金を稼いでいるYouTuberたちと仕事をしたい、と思うんじゃないですかね。

林:お金は大切ですけど、お金が中心になると、ちょっと軸がズレてくるような気がするんです。20代って、貧乏でもとにかくガムシャラに仕事して、お金を稼ぐのは40代からでいいんじゃないですか。

佐久間:その気持ちもわかります。そのほうが足腰が強くなると思うし、20代のうちに失敗しておくことが大事だと思うので。でも、いまのテレビ業界はちょうど端境期にあって、若い人を抜擢したいという気持ちはあるんですけど、少子高齢社会なんでマーケットは上にあるから、その世代に響くコンテンツをつくれる40代のディレクターとかMCの息が長くなってしまう。だから、20代は「俺、チャンスもらえるのは20年後じゃないの?」みたいに思えちゃうんですよ。一方で、若い世代でも、IT以外だと、インスタグラムの広告系の人とか、TikTok(短い動画に特化したSNS)のインフルエンサー(大きな影響力を持つ人)とかは稼いでますね。

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