※写真はイメージです
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 現役の収入や物価はどんどん上がるのに年金はほとんど増えない──。本誌独自調査で約30年後の「目減り」する年金の姿が明らかになった。ならば、じり貧になるのを待つのではなく「防衛策」を発動しようではないか。年金での挽回策は? 生活はどう見直せばいい?

【図表】「目減り」防衛策としての「年金繰り下げ」シミュレーションはこちら

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 今月15日、新年度分として4・5月の年金が受給者の口座に振り込まれた。3月までと比べて0.4%低い金額だ。

 2カ月分だから減額が千円を超え気を悪くされた受給者もいただろう。しかし、減った金額が目に見えているだけ今年度の改定はわかりやすい。後述するが、今後、受給者が気にかけなければならないのは「見えない目減り」だからだ。

 先々週号(6月17日号)と先週号(同月24日号)の2週にわたって、「あなたがもらえる『本当の年金額』!」と題して、今後30年以上にわたって現役の平均収入や生活費は増えていくのに、年金額はほとんど増えない現実を見てきた。

 現役との比較では、現役の平均収入(額面)が35年間で6割以上も増えるのに、生涯の平均年収500万~700万円の会社員世帯の年金額は1割前後しか上がらないシミュレーションを示した。

 一方、生活費「年間300万円」との比較では、生活費が物価上昇で増えていくため、年金だけでは家計は毎年赤字になり、累計では「1200万~2800万円」が足りなくなる様子を「家計の長期予想表」を使って試算した。

 いずれも受給者の生活の先行きが暗いことを示すものだ。

 年金額が増えないのは「マクロ経済スライド」と呼ばれる支給抑制策による。賃金や物価が伸びるほどには年金額を増やさず年金を「目減り」させる制度。1年ごとの「目減り」は小さくても長期間になればなるほど影響は大きくなる。

「マクロ経済スライド」が厄介なのは、まさにこの1年ごとの「目減り」が小さい点にこそある。冒頭で触れたように、普通の人では気づかない可能性すらあるからだ。

週刊朝日 2022年7月1日号より
週刊朝日 2022年7月1日号より

「マクロ経済スライド」の仕組みを示す図を見てほしい。典型例は上の図だが、この場合は実質価値は「目減り」するのに、もらえる年金額そのものは前年度より上がるのだ。金額が増えるので、危機感どころか安心してしまう人が多いのではないか。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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