400ページを超す『地球の歩き方 ムー』(税込み2420円)
400ページを超す『地球の歩き方 ムー』(税込み2420円)

 かたや、海外旅行ガイドブックの草分け的な存在で、もう一方は知る人ぞ知るミステリーマガジン界の雄。平時なら「ありえない」両者がタッグを組んだ『地球の歩き方 ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方』が売れている。今年2月に発売し、すでに7刷12万部(5月末時点)。異色のコラボレーションはなぜ成功したのか。

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「初回に入荷した分は1週間で完売しました」

 そう語るのは、東京・中野にある明屋(はるや)書店中野ブロードウェイ店でガイドブックなどを担当する宮田弥生さんだ。

 中野という土地柄、同店にはサブカル好きの客が多く集まるという。

「追加分が出版社からすぐには手に入らないほどの反響で。いまでも多い月は50冊ほども売れている人気商品です」(宮田さん)

『地球の歩き方 ムー』を手に持ってみると、ずっしり重い。分量は実に400ページ超。その厚さが示すように、随所にこだわりが見て取れる。

 まずは装丁だ。『歩き方』のデザイナーがベースを描き、「ムー」のデザイナーが表紙と背表紙に同書のトレードマークである人間の目を描き入れ、裏表紙もエジプトをモチーフに「ムー」らしいデザインに仕上げた。

 モアイ像で有名なチリ領のイースター島や、未確認生物(UMA)ネッシーで知られる英国北部スコットランドのネス湖など、掲載したスポットはどれも実際に訪ねることができる。その土地が持つ歴史や意義、現地への行き方が詳しく書き込まれ、本家の『歩き方』と比べても遜色がない情報量だ。

「冒険用荷物チェックリスト」の欄にお清め用の塩や、悪魔とドラキュラ対策用の十字架やにんにくなどがあげられるなど、くすっと笑える仕掛けもある。ほかに、世界の不可思議な謎を「ムー」らしい視点で解説した“ムー欄”もちりばめられている。

『歩き方』と「ムー」はともに1979年の創刊。『歩き方』は、海外旅行時の定番ガイドブックとして老若男女に利用され、これまで120タイトルを出版してきた。かたや「ムー」は、「世界の謎と不思議に挑戦する」をテーマに、UFOやUMA、古代文明、超能力など世界の不可思議な事象を独自の目線で紹介。この6月に創刊500号を数えた老舗のミステリーマガジンだ。

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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