※写真はイメージです (GettyImages)
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 運転免許を返納したため買い物に行けない、足腰が弱って重いものが運べない……。高齢になると、生活する上でさまざまな「困りごと」に直面する。楽しく快適に暮らすために、地域の“資源”で解決できる方法がある!

【図表】「もしも」の時の備えや支援サービスなどの一覧こちら

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 高齢期になると、生活上の不便だけでなく、「リスク」が生じてくる。

 ある日突然、家の中で倒れたとき、救急車を呼べないまま息を引き取ってしまうことが、最も恐れるリスクのひとつだ。

 北関東のとあるマンションの管理組合に、住人から連絡が入った。

「上の階からの水の音が止まらない」

 警察や管理業者が立ち会いのもと、水の音がする部屋に入ると、一人暮らしの女性(当時70)が風呂場で亡くなっていた。

 心臓発作を起こしたのか、死因は不明だが、お湯が出しっぱなしの状態だったという。

「孤独死というと、親戚や近所との付き合いがない人が病気になって、ひっそりと亡くなるといったイメージがありますが、その女性は、部屋の中はきちんとして、マンションの住人とも挨拶は普通に交わしていた。元気だと思っていた人でも突然亡くなることがあるのだと、そのとき痛感しました」

 そう語るのは、終活アドバイザーでファイナンシャルプランナーの廣木智代さん。

 廣木さんは、約20年前に仕事場用としてワンルームマンションを購入し、2010年に管理組合を立ち上げ、理事長に就任した。後に自宅がある町内会長なども兼ねるなかで、高齢期に差しかかる人たちが直面するさまざまな「困りごと」を見てきた。

 当事者にとっての困りごとは、地域にとっても放っておけない問題という。

 終活というと、葬式やお墓などを決めておく「人生最終盤のための準備」といったイメージを抱く人も多い。しかし亡くなったときのための準備だけでなく、急に倒れたとき、認知症になったときなども想定しておくと、周囲や地域の人も慌てなくて済む。

「女性の親族には甥と姪がいましたが、相続放棄されていたので、マンションの管理費などが滞納となってしまい、私たちは困惑しました。特に一人暮らしの人は個人情報の壁はあっても、身元保証人や緊急連絡先をマンション管理組合や町内会と共有したほうが安心できます」(廣木さん)

 町内会では、一人暮らしの男性(40代)が、アパートの部屋で亡くなっていたことがある。前日、友人たちとお酒を飲んでいたそうで、出勤してこないのを不審に思った職場の同僚らが駆けつけて男性が倒れているのを発見したという。

 廣木さんは、一人暮らしの人は「まだ若いから大丈夫」といって安心しないで早めに「エンディングノート」を書くことを勧めている。

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