武装の変化に注目だ(c)NHK
武装の変化に注目だ(c)NHK

「今回の大河ドラマは『新・平家物語』(1972年)や『草燃える』(79年)とは一線を画す、リアリティーのある歴史ドラマになっています」

【写真】小池栄子演じる政子の服装の変化にも注目

 そう力強く話すのは「鎌倉殿の13人」(三谷幸喜脚本)で風俗考証を担当している立正大学教授(中世史)の佐多芳彦さんである。佐多さんは「平清盛」(2012年)で儀式・儀礼考証に参加して以来、「真田丸」(16年)、「麒麟がくる」(20年)など、これまでに計5本の大河ドラマで風俗考証を手掛けている。

 歴史ドラマの場合、史実はどうだったかについてグレーゾーンがあり、その部分をどう伝えるかの方法が二つある、と佐多さんは言う。一つは脚本家が創作で作り上げる手法で、もう一つは時代考証を担当する専門家が史料から可能な限り類推していく方法だ。

 佐多さんによると「鎌倉殿」はより後者に力を入れ、数々の資料などから史実を積み上げているという。そうした時代考証による「成果」の見どころとして、佐多さんは特に、物語の進行とともに変化する衣装をあげる。

「義時をはじめ、武家の男性はいつも直垂(ひたたれ)を着用しています。初めのころは薄くて素朴なものだったのが、次第に布も厚みが増し、上等になります。義時が手を広げている『鎌倉殿』のメインビジュアルがありますが、あの服装が義時の最終形の直垂です」

 女性の服装の変化はより顕著だという。

「政子はドラマのスタート時は庶民の服装である小袖に前掛けのような湯巻でしたが、小袖の素材が上等になりました。今や高貴な人が着る袿(うちぎ)です。政子の服装の変化や進化は、源氏の立ち位置を如実に表していますね」

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