監督 平山秀幸/29日からテアトル新宿ほか全国公開/95分 (c) 2022「ツユクサ」製作委員会
監督 平山秀幸/29日からテアトル新宿ほか全国公開/95分 (c) 2022「ツユクサ」製作委員会

「ツユクサ」の監督は「愛を乞うひと」で日本アカデミー賞の最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞した平山秀幸。出演は平岩紙と江口のりこが芙美の会社の同僚を演じるほか、泉谷しげる、ベンガルなど個性派がずらりと顔をそろえる。

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 とある小さな田舎町で暮らす芙美(小林聡美)。タオルを作る会社で働きながら、ひとり暮らしをしている。ある日、芙美が運転する車に何かがぶつかる。どうやら隕石の破片が車に飛んできたらしい。隕石に遭遇する確率は1億分の1。考え方によっては奇跡に出会うようなものだ。

 もうひとつ、小さな出会いが芙美に訪れる。なじみのバーに見慣れない篠田(松重豊)という男性がやってくる。彼は以前、芙美がジョギング中に何度か見かけた男性で、草笛が上手な人だった。何気ない日々を楽しく送る芙美だが、ときおり哀しみが見え隠れする。彼女がひとりで暮らしていることには理由があった。そして篠田もまた哀しみを抱えて生きている人で……。

監督 平山秀幸/29日からテアトル新宿ほか全国公開/95分 (c) 2022「ツユクサ」製作委員会
監督 平山秀幸/29日からテアトル新宿ほか全国公開/95分 (c) 2022「ツユクサ」製作委員会

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
中年の独身女と独身男に生まれる行きずりの思いやり程度の関係が、徐々に大人の男女の寄り添う気持ちになっていく。ここで思いきって一歩を踏み出す小林聡美演じるヒロインの“踏み出す一歩”の小さな勇気に拍手!

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
主人公だけでなく彼女を取り巻く人々も喪失感を抱え、それぞれのやり方で乗り越えようとするので、コミカルな要素もある群像劇と見ることもできる。背景の説明を最小限にとどめ人物たちの思いを想像させる演出が光る。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
大人は誰だって過去の苦い経験があります。それにずっとしがみついてしまう気待ちもわかりますが、小さな幸せへの気付きで人生が明るくなることを、この爽やかな一本が教えてくれます。希望に満ちた幸せな時間でした。

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★
子どものナレーションは寓話性を狙ったのかもしれないが、寓話にしても社会性や時代性が殆どなく、人生観とモラリティーが古く、観ていてつらかった。良かったのは編集。サクサク進むので展開が早い。俳優陣が良いのが救い。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号