放置していると相続人はねずみ算式に増える恐れも(写真はイメージです)
放置していると相続人はねずみ算式に増える恐れも(写真はイメージです)

 相続登記が2年後、過去にさかのぼって義務化される。怠ると過料が科されるようになる。所有者不明の土地は九州本島くらいの面積に増えているという。

【所有者不明の土地の問題点はこちら】

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 所有者がどこにいるのか、わからない土地が増えているという。相続の登記が適切にされていないことが背景にある。所有者不明の土地の面積が広大になり、公共事業の用地取得で障害になるなど、さまざまな問題を引き起こしている。

 実際どのような問題があるのか。東京都心の六本木ヒルズ(港区)は大規模な再開発で建てられた。1986年に地元住民に呼びかけ、2003年に完成。この過程で、11ヘクタールの事業区画の境界確定に4年を要したという。

境界確定に4年を要したという六本木ヒルズ
境界確定に4年を要したという六本木ヒルズ

 事業を手掛けた森ビル役員が東京財団政策研究所で発表した論文によると、この開発で所有者不明の空き地が5平方メートル弱あったが、登記住所に所有者がいなかった。弁護士に依頼して親族を探したところ、米国在住とわかった。境界確定の立ち会いをお願いするのが難しく、その兄弟にいったん土地を買い取ってもらい、それを事業者が購入して、境界確定の作業をしたという。

 このほか、国土交通省がまとめた資料によると、国道を新設しようとしたところ、用地の一部は明治時代の登記のままだったケースがある。

 この登記名義人は明治生まれの女性(故人)で、最終登記は売買で明治37(1904)年。相続調査をすると、法定相続人は148人いた。登記名義人をはじめ、戸籍が現存しない人が8人もいて、法定相続人を全員特定することができない。中には海外移住後に亡くなったが、日本の戸籍でその事実が証明できないため、特定できない人もいるという。

 このケースは、収用手続きにより国が土地を取得したが、多数の法定相続人への任意協議と収用手続きで約3年を要した。

 河川改良の公共事業で、用地の取得が困難になっているケースもある。河原を事業予定地としているが、一部に墓地があり、その部分の最終登記が昭和33(1958)年で、登記名義人は約40人の共有。相続調査をすると、相続人は242人ほどで、うち3人が所在不明。相続人が多数いて、その探索や個別交渉に時間を要している。費用負担の問題などもあり、現在は解決方法を検討しているという。

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