住民票は転出や死亡で記録から除かれて除票となる。その保存期間は5年だった。戸籍は、原本と一緒に附票を保管し、その戸籍がつくられてから現在までの住所が記録されている。この附票も転出や死亡で除附票となり、その保存期間は5年だった。

 住民票の除票も戸籍の除附票も、19年から保存期間が150年間に延長された。しかし、過去の事例で5年の保存期間を過ぎたものは、行政の資料で所有者の所在を探ることができない。

 一方で、土地の所有者は固定資産税を納める義務があるが、所有者不明の場合はどうなのか。

 固定資産税の徴収は市区町村が行う。総務省の固定資産税の担当者は「登記簿に所有者がいれば納税義務者であり、所有者が亡くなっている場合は実際に所有する人に課税する」という。所有者がわからなくても、そこで店舗を営んでいたりする使用者に課税する。

「使用者がいれば課税できる。まったくわからない場合は課税できない」(総務省担当者)

◆費用と手間がかかる相続登記 罰則金は10万円だけ…

 2年後に相続登記が義務化されるが、義務の対象はどういう要件なのか。

 所有権移転登記は、贈与や売買などで必要になるが、中でも特に相続による登記を義務化する。相続人は取得を知ってから3年以内に相続登記を申請する必要がある。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される。

 ここで注意が必要なのは、24年4月以降に相続したケースのみならず、過去に相続していて、登記を怠っていたものも対象となることだ。

 法務省の説明資料によると、関係者が多くて必要な資料を集めるのが難しい場合などは、罰則の対象にならないという。

 こうした相続が発生したら「すぐ過料の対象になるのではないだろう」というのは、司法書士で不動産名義変更手続センターの板垣隼代表。法務省は今後、過料の対象を例示するなどして明確化する方針を示しており、実際には催告などをするともしている。

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