※写真はイメージです (GettyImages)
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『物理学者、SF映画にハマる 「時間」と「宇宙」を巡る考察』(高水裕一、光文社新書 858円・税込み)が刊行された。SF映画・ドラマでしばしば描かれるタイムトラベルや、無限遠の距離を移動する宇宙旅行などは、科学者の目にはどう映るのか。宇宙論を専門とする物理学者が、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をはじめ最近までのSF映像作品に登場する未来技術などを、相対性理論、量子力学などに依拠しながら検証し、実現可能性の度合いを探っている。

 何万光年も離れた場所の間で即時通信することがどうして可能なのかなど、物理学的にはありえない設定が手厳しく指摘されたりもするが、著者は科学者であると同時に無類のSFファンでもある。SF作品での空想の産物が、現実の科学者の発想の出発点になったという事例もあるという。大事なのは、「こんな技術があれば」とワクワクできるかどうかだ。本書はその感覚を科学的に捉え直すための絶好の手引きとなるはず。(平山瑞穂)

週刊朝日  2022年4月15日号