※写真はイメージです (GettyImages)
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 栄華を誇る食ドラマも、今後、ブームが去って消滅、なんてことにならないか。前出の永森氏は、「確かに、すでに細分化が進んでいて、やり尽くされていると思う人もいるでしょうね」と言いつつ、こう語る。

「最近のテレビ視聴者の行動習慣を調べると、1時間もののコンテンツよりも、30分くらいのものが気軽で見やすいという人が大多数になってきています。深夜帯のドラマ枠やネットでの配信枠も増えてきていて、短尺できっちりと切り口がある作品は一層求められている。そうしたニーズにぴったり合う食モノというジャンルは、これからもなくならないと思います」

 今後はますます、作品の「質」が問われてくるのかもしれない。10年にわたって視聴者に愛される「孤独のグルメ」の良さについて、久住氏はこんな自負があるという。

「『普通と違っておいしい』や『他と比べておいしい』をアピールする作品がたくさんありますが、『孤独のグルメ』は到着点が『おいしい』ではありません。ドラマ版の松重さんも『うまい、うまい』と大騒ぎしない。ものすごく腹が減っていて、出会ったものがおいしければ、それが何の変哲もない立ち食いソバであろうとも、十分満足なんです。コロナ禍で『個食』が叫ばれてからは『食べる楽しみ方を教えてください』という質問やインタビューの依頼もよく来ます。『おなか減らせばいいんだよ!』と言いたいです(笑)」

 おなかいっぱいになっても、またおなかが空くのが人間の性。食ドラマの繁栄も、当分は続きそうだ。(桜井恒二)

週刊朝日  2022年4月1日号