室井佑月・作家
室井佑月・作家

 作家の室井佑月氏は、コロナに対する国の方針が見えてこないと憤りを露にする。

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 この原稿を書いている2月14日の「NHK NEWS WEB」。「大阪府 まん延防止延長か緊急事態宣言要請か 対策会議で検討」という記事によれば、「新型コロナの感染拡大が続くなか、大阪府は14日、対策本部会議を開き、今月20日が期限となっているまん延防止等重点措置の延長を国に要請するか、新たに緊急事態宣言の発出を要請するか、対応を検討することにしています」という。

 その理由について吉村知事はこういっている。

「感染は、とりわけ、重症化リスクの高い高齢者に広がっており、非常に厳しい状況にある病床のひっ迫はより厳しくなる可能性が高い」

 大阪は、政府に緊急事態宣言を要請する基準として重症病床使用率40%といっていたが、それにまもなく到達しそうだ。14日の発表によれば、大阪では自宅療養者約7万4千人、調整中の待機者が約6万人いる。

 ちなみに大阪は、2月8日、医療提供態勢が逼迫(ひっぱく)しているとして「医療非常事態宣言」というものを出した。

 医療機関に対し、不急の手術や入院を延期せよ、という要請だ。大阪市の消防局は、高齢者施設で療養しているコロナ陽性者の症状が悪化しても、すぐに119番するのは控えて欲しい、との通達も出して。

 実際にもう医療崩壊しつつある、といっていいんだろう。そんな中、吉村知事が緊急事態宣言の要請をすぐに出せないのは、そうすることによって補償などの話が出てくるからだろうか。コロナの感染者数にいちいちビビって経済を止めるのはよくない、という考え方の人も一部いる。

 あたしは大阪のことをとり上げたが、大阪についてだけいっているのではない。国の方針がいまだあたしたちに見えてこない。

 指導者たちは、「コロナを乗り越え」と盛んにいうが、たとえばそれなら、大事だといわれているワクチン3回目接種が、こんなに遅いのはありえなくないか?

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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