加えて日本人のライフスタイルの変化が、この流れに「とどめ」をさしつつある。現在の50歳代以下にみられる「晩婚・晩産」だ。

 内閣府の「少子化社会対策白書」によると、19年の平均初婚年齢は夫が31.2歳、妻が29.6歳。1985年と比較すると夫は3.0歳、妻は4.1歳上昇している。また、赤ちゃん出生時の母親の平均年齢を見ると、19年は第1子が30.7歳、第2子が32.7歳で、同じく85年との比較では、第1子で4.0歳、第2子で3.6歳上昇する結果となった。

 老後資金に詳しいFPの長尾義弘氏が言う。

「かつてのように20歳代での結婚・出産パターンですと、住宅資金→教育資金→老後資金と大きな支出は順番にクリアしていけました。ところが、結婚が30歳前後となれば、出産は30代前半、住宅購入は40代前半にずれ込んでしまいます。子供の大学は50代になってからですから、50代は教育資金と住宅ローンで手いっぱいで、老後資金まで手が回らなくなってしまいます」

◆教育費ずれ込み80歳で家計破綻

 最近では出産が30代後半のこともあり、なおさら50代で老後資金は貯められなくなる。こうした傾向から、長尾さんがこのほど上梓した本のタイトルは『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』だ。すでに、老後資金は60歳までにまったく準備できないことが前提になっている。

 さすがに「貯蓄ゼロ」の家計は多くはないだろうが、それでも教育費が50代半ばまで食い込んでくると、80歳前後で力がつきてしまう家計は容易に想像がつく。

 例えば、50歳代前半は収入が年700万円、55歳の役職定年で50代後半は3割減の同500万円、60歳以降は65歳まで再雇用で同240万円の会社員がいたとしよう。家族は妻と子供2人で、下の子が大学を卒業するのは56歳とする。50歳で貯蓄は1千万円、60歳で退職金1500万円が入ってくる。年金は夫婦2人で標準的な年280万円だ(65歳以降)。

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