林:そうですよね。企画書読んだら、「ふざけるな!」って言われそうですもんね(笑)。

上田:でも、今回は「好きなものをつくってください」と言われたので、「ここだ!」と思って。

林:でも、決して下品じゃないところがすごいですよ。トイレで自分の男性器が消えてなくなっていることに気づいたところなんか、たぶん笑いが来ると思うけど、決して卑しい笑いじゃなくて。

上田:ああ、メチャクチャうれしいですね。

林:10年ぐらい前にこの奇想天外な話を思いついたとおっしゃったけど、ちょっとヒヤヒヤしませんでした? 誰かほかの人がこのアイデアを思いついて、漫画なんかにされちゃったらどうしようとか。

上田:この話って、思いついても、形にするのが難しいと思うんですよね。だから、ここで形にできて本当によかったです。

林:今ふと想像したんですけど、男の人って若いころ、性欲の制御が不能なところがあって、それが、大げさにいえば「諸悪の根源」になることもあると思うんですよ。どれだけ苦しめられてきたかと。だけど、“ソレ”がなくなって、自由に空を飛んでいるって、男の人は、ある意味、解き放たれた爽快感があるのかもしれませんね。

上田:アハハハ、すごい想像力ですね。そんな独創的な感想は初めて聞きました(笑)。

林:さっき「成功を収めたあとの壁を描きたかった」とおっしゃったけど、ご自身のことでもあるんじゃないですか?

上田:けっこう自分を重ねてるんですよ。

林:「カメ止め」の大ヒットで、お金もどっさり入って。

上田:どっさりは入ってないんですよ。入らないんです、映画監督には。興行収入の何パーセント、みたいなのはないので。

林:監督さんってそうなんだ。

上田:いくら当たろうが当たるまいが、基本的に日本の映画監督は、最初のギャラ分だけなんです。ただ、「カメ止め」はちょっと異例のヒットになったんで、特別ボーナスみたいなのがスタッフ・キャストには支払われましたけど。

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