上田慎一郎 (撮影/写真部・松永卓也)
上田慎一郎 (撮影/写真部・松永卓也)

 劇場用長編デビュー作「カメラを止めるな!」で旋風を巻き起こした上田慎一郎監督。「純文学の味わい」と作家・林真理子さんも絶賛の新作では、何を企んでいるのでしょうか。

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林:今回の新作「ポプラン」という映画(1月14日から全国公開)は、上田監督の大ヒット作「カメ止め」(「カメラを止めるな!」2018年公開)を含めて、3作目ですか。

上田:実写の単独長編ではそうですね。そのあいだに「100日間生きたワニ」というアニメとか、3人の共同監督で長編を1本つくったりしてます。

林:「ポプラン」、これはまたシュールな作品で。

上田:ハハハ、そうなんですよ。変な映画であれなんですけど。

林:ネタバレになるからあんまり言えないけど、主人公は漫画配信アプリで成功した若手経営者で、自分の男性器がある朝突然なくなってしまって、6日以内にそれを見つけないと元に戻らないという奇想天外なお話で、こんな映画見たことないというぐらいおもしろかったですよ。

上田:あ~よかった! メッチャうれしいです。

林:どうしてこんな奇抜な映画を撮ろうと思ったんですか。

上田:着想を得たのは10年ぐらい前で、成功のようなものを一回つかんだあとに訪れる壁みたいなものを描きたいと思ったんです。そのとき僕はただのフリーターだったので、主人公のキャラクターとはちょっと違ってましたけど。

林:何とも言えない、すっとぼけたこの感じって、日本映画にはなかなかないですよね。

上田:ベタでシュールとか、エンタメでアートとか、相反するものが一つになった映画をつくりたかったんです。

林:捕獲のために、大の大人が虫捕り網を持って必死に走り回っているシーン、それだけでもおもしろいですよね(笑)。

上田:男性器そのものを映像にすることは「コード」的にも当然ダメなわけで、当初は「そんな映画、どうやって撮るんだ?」って言われました。でも、「逃げた“ソレ”は時速200キロで飛ぶので、映らないんです」って(笑)。

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