昨年11月にあったCOP26(英グラスゴー)の会場
昨年11月にあったCOP26(英グラスゴー)の会場

「中国は国際会議の最後の段階で駄々をこねて存在感を示すというのが癖になっていますが、英国のシャルマ議長も最終的にはインドや中国の提案をのみ、お互い妥協して歩み寄ることができました。COP合意文書で石炭火力について言及したのは初めてのことですし、大変、画期的だったと思っています。日本としてはどちらの表現でも適合できたと思います」

──日本は現在、総発電量のうち石炭火力の割合は32%ですが、2030年度には19%にする計画です。今後、見直しが必要になりますか。

「結論から言えば、エネルギー部門でイノベーションを起こし、もっともっと低くしたい。しかし、まずはいかに19%を実現するかを考えねばなりません。再生可能エネルギーを増やすと同時に、燃焼時にCO2を出さないアンモニアを石炭に混ぜて燃やすアンモニア混焼という技術があり、その実験を進めている会社も実際にあります。仮に国内の大手電力会社の保有するすべての石炭火力発電所でアンモニアの混焼割合を20%にすると、CО2の削減量は年間約4千万トン、割合をだんだんと高めていき、100%のアンモニア専焼にすると、年間約2億トンが削減できるとの試算もあります」

──日本のCО2排出量のうち電力分は約4億トンですから、実現すれば確かにインパクトは大きい。アンモニア混焼・専焼は技術的に可能ですか。

「私は可能だと思っていますが、問題はできるかできないかではなく、やるかやらないかです」

──岸田文雄首相は演説で火力発電のゼロエミッション化に言及しましたが、石炭などの火力発電を維持する方針が批判され、環境NGOから不名誉な「化石賞」を受けました。

「謙虚に受け止めねばなりませんが、岸田首相は途上国への脱炭素支援について、25年まで5年間の支援額600億ドル(約6.8兆円)に、100億ドル(約1.1兆円)を新たに追加することも表明しました。そのことも評価してほしいですね」

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