沖合に浮かぶ洋上風力発電(長崎県五島市)
沖合に浮かぶ洋上風力発電(長崎県五島市)

──石炭火力の全廃時期を示すのは、なかなか難しいのですか。

「50年にアンモニア専焼になれば石炭火力は廃止になるわけですが、どれだけ早くできるかは、これからのイノベーションにもかかっています」

──再エネで注目しているものはありますか。

「洋上風力が大きなポイントになると思っています。日本の沿岸は海がすぐ深くなるので、浮体式がポイントになりそうです。すでに長崎県の五島市沖で商用運転しており、今後、2MWの洋上風力を8基建設する計画があります。海中の錘部分は魚が集まる魚礁になっていて漁業にもメリットがあり、地元の漁協も発電所に協力してくださっていると聞いています」

──先進国が資金や技術を支援して途上国のCО2の排出を減らした場合、その削減分を先進国の排出権(クレジット)として計上できる「市場メカニズム」のルールも採択されました。

「先進国と途上国の両方が削減量としてカウントしてしまう『二重計上』の問題などがあってなかなか合意に至らず、市場メカニズムが規定されているパリ協定6条の詳細ルールがずっと宿題になっていました。あまり知られていませんが、今回、日本が『削減プロジェクトを実施する国(ホスト国)が承認した分だけをクレジットとして、国の削減目標などに使用できるようにしよう』と提案して合意できたのです。この“最後のピース”と言われた6条ルールが解決しそうだということで、チャンスを逃さずまとまっていこうという機運が生まれ、1.5度目標の合意にもつながりました。私は、日本が大きく貢献できたことを大変うれしく思います。環境省のスタッフに大変な熱意とこれまでの蓄積があったからこそです。この市場メカニズムがルール化されたことで、民間の脱炭素ビジネスが大きく拡大することも期待できます」

──今年、特に力を入れたい政策は何ですか。

「22年度予算案に、地球温暖化対策に取り組む自治体を対象にした『地域脱炭素移行・再エネ推進交付金』として200億円を計上しました。都市部や農村、離島など地域によって取り組みは異なると思いますが、再エネ発電の導入や住宅の省エネ対策、地産地消による輸送CО2の削減などを通じて、30年度までのCО2の排出実質ゼロ等を実現する『脱炭素先行地域』を100カ所以上選定して、国が支援する仕組みです。この1月から募集して、初年度は20カ所ほど選ぶことになると思います」

──まちおこしにもつながりますか。

「そうです。脱炭素とまちおこしを両方やって、全国に『脱炭素ドミノ』を起こしていきたい。これを22年のキーワードにしたいですね」

(聞き手/本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2022年1月21日号